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脳死状態の妹はいわば植物人間だ。
全身に繋がれた機械を外すだけで絶命する。
そんな状態の妹に、どうしてみんな何かしようとするのかな。

声をかけたって返事も出来ないし、その声は決して妹に届かない。
何をしたって今の妹には全て無意味だ。

近藤さんは慣れた手つきで花瓶の花を取り替える。
前の花は誰が持ってきたんだろうね。
眠る妹の周囲を彩らせたって妹は絶対に"元には戻れない"のに。



「お、外に金木犀咲いてるな。ちょっと窓開けてみるか」



近藤さんはそう言いながら窓を開けた。
すると風に乗って微かだけど金木犀の香りが漂ってくる。
けど、匂いが分かるのは私と近藤さんだけだよ。




「………もういいですか」




来て5分も経たないうちに私は帰ろうとしていた。
近藤さんはじっと私を見つめる。
何か言いたげな表情だけど近藤さんは何かを堪えた。




「そうかそうか。俺はもう少しいるから先に帰ってていいぞ」



「分かりました、失礼します」




私は近藤さんを病室に残して廊下に出た。
近藤さんは何か妹に話しかけていたけど毎回毎回阿呆らしい。

あんな状態の妹をまだ人間だと言えるの?
今の技術がなかったら妹は確実に死んでいる。
本当にただの約立たずでしかない。

でも、みんなは妹を見捨てようとしない。
私だけ、私だけが妹の死を望んでいる。
死んだも同然の人に、なんであそこまで優しくできるのか私には理解できなかった。

────────もしも、私と妹の状態が逆だったらみんなはどうだったのかな。
私のことここまで面倒見てくれる?
毎日新しい花を届けてくれた?

最近、よく思うことがあった。
私って人として大事な何かが欠けている。
心にいつも穴が空いていて、何をしても満たされない。
そんな私を見て、"生前"の妹はこう言った。





『お姉ちゃんって可哀想な人だよね』




あの言葉が今でも脳裏に焼き付いて離れない。

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マヨネーズライダー(プロフ) - 何回も読み返してます。切ないですね。これからも読み続けます (2021年2月14日 1時) (レス) id: 01ab9bdc45 (このIDを非表示/違反報告)
えいたん(プロフ) - とても引き込まれる作品です!更新楽しみにしてます! (2019年8月21日 4時) (レス) id: 8f70e4d35f (このIDを非表示/違反報告)
ノイズ(プロフ) - 最高です!ハピエンでもバットエンドでも絶対面白いですね!更新あれば楽しみです! (2019年7月6日 18時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2019年6月27日 0時

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