34【過去編】 ページ34
【A】
最年少で禿を卒業し遊女となった私を妬む者は多かった。
遊郭は女の世界だからこそ、互いを敵視しあい醜い派閥争いが繰り広げられていた。
幼い頃から遊郭で育つ私には異性への抵抗が無かった。
無関心と言った方が正しいのかもしれない。
私の知っている男という生き物は自分の欲を満たし遊女を道具として扱うモノを指していた。
最年少で遊女デビューを果たした私は周囲の遊女からいじめを受けていた。
客をもてなすために仕入れた着物を引き裂かれたり、何かと難癖をつけては私を陥れようとした。
ねじ曲がった世界での生活は私から"普通"を奪った。
普通の女の子のような恋愛はできない。
私たちは客を偽りの恋愛へ引きずり込む。
それでも夢を見てしまう遊女は後を絶たなかった。
それは私も同じで多くの男を知ってきたからこそ、自分にとっての拠り所が欲しかった。
大勢の男に指名されても意味がない。
たった1人、私を愛してくれる人がいればそれだけで良かった。
日が経つにつれて、私へのいじめはエスカレートした。
遊女の目玉である私に傷こそは付けられないものの、食事にゴミや虫の死骸を混入させられることは日常茶飯事となった。
私はなりたくて上級クラスの遊女になったわけではない。
本当なら、ずっと底辺にいて誰にも気付かれずにひっそりと客をとり、慎ましい遊女でいたかった。
嫉妬からくるいじめ、指名が絶えずボロボロになるまで抱かれる生活。
私には慰めてくれる人も場所も存在しなかった。
そんなある日私は1人の男に出会った。
男は私を指名したにも関わらずただ晩酌をしただけでそのまま私に触れることは無かった。
最初は珍しい客だ、という印象だけだった。
だが彼は私を指名しては晩酌をし他愛もない話をするだけだった。
"何も無い"ことが私にとっては刺激的で衝撃だった。
────────だからこそ、私は"彼"に惹かれた。
16歳、私の初恋だった。
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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時