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【銀時】



今日はいつもより遅くに吉原へ来た。
紅薔薇太夫と会う時間は毎回午前中だ。
というのもあいつはこの吉原で最高位の遊女。
ほぼ毎日男から指名されている。


だから夜はあいつの本業の時間だ。
俺は本業の邪魔をしない午前中に設けられた30分の時間で毎回続かない話をしていた。


そして今日は朝に日輪から連絡が入った。
ここへ来て初めて、紅薔薇太夫の指名が無かったと。
本当に午前中会うか聞いてみたところ、夜の時間に会ってくれるそうな。


夜の吉原は午前中とは雰囲気が一気に変わる。
それこそ大人の街、いや、偽りだらけの街だ。
遊女の甘い囁きに騙され、金と引き換えに限られた時間だけ疑似恋愛を繰り広げる馬鹿な男たち。


そんな疑似恋愛に本気になるなんて馬鹿げてる。
けどそれに見事ハマっちまうのが吉原の怖いところだ。




「良いのか。久しぶりの休息だってのに俺との時間にしてよ」




午前中に会うときとはまた別の顔をした紅薔薇太夫に俺は話しかけた。
夜の紅薔薇太夫は一弾に美しく妖艶だった。
影かかった顔はさらに魅力を増していて背景の煌々とした灯りが見事に合わさっていた。




「あ、そういやお前に渡したいものがあるんだ」




俺は懐からかんざしを取り出した。
奮発して買ったとはいえどたかが数千円。
この手のクラスの女じゃもっと高いものを普段から貢がれてるだろう。


けど俺は別に貢ぐつもりもねぇし、そこにいくら賭けようが無駄だと思っていた。
この女は金などに執着していない。
どんなに高級な物を貰ったところで微塵も興味ない。



「……………地上での品ですか」




「あぁ、貰うのは珍しくねぇだろ?」




「…形が綺麗に残ることは滅多にありませんでした。私はそれでいつも殺していましたから」




紅薔薇太夫はかんざしに冷酷な眼差しを向けた。
紅薔薇太夫は貰ったかんざしで客を殺していたらしい。




「んじゃ、俺を殺してみるか?」




俺は紅薔薇太夫の目の前にかんざしを置いた。
そしてすぐ正面に座って両腕を広げる。
紅薔薇太夫は小さくため息をついた。




「変な人ですね。死に恐れがないのですか?」




「んー、まあ怖いっちゃ怖いけどな。けど紅薔薇太夫、あんたも死に恐れがないのは同じだろ?」




死にたいってわけじゃねえ。
けど紅薔薇太夫は死を目前にしたらすんなりと受け入れるだろう。
その目には生きる気力がねぇからだ。

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八重菊(プロフ) - コメントをさせていただきます。もうホンマに、マジで泣きました。ここまで泣いた作品は初めてです.........!素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月15日 1時) (レス) id: 4b3ed537f2 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ものすごく心に残るお話でした。来世で必ず一人の女の子として、銀さんと幸せになってほしいと思いました。 (2020年4月25日 16時) (レス) id: 6dff351985 (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 45話読んだときは、「紅薔薇太夫!何で!?」って思った。でもその後の話を見てたら、何だか腑に落ちた。幸せなまま…… すごくいいお話でした。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
Leaf(プロフ) - 泣いた。いやめっちゃ泣いた。 (2019年1月3日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - ハニーさん» コメントありがとうございます。愛着湧いてしまった夢主ちゃんだったからこそ、早く解放してやらなきゃな…という使命感に駆られてこうなりました笑 (2018年12月10日 3時) (レス) id: 95173b8ff8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠々亜 | 作成日時:2018年10月27日 14時

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