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「誘拐を目撃した観光客が偶々撮影したものです。」
調査員と福沢が会議室に集められていた。
「…有り触れた型だ」
国木田が見せた写真を見た福沢がそう言う。
「はい。
車台番号も偽造でした。しかし、横浜でこの手の偽造業者となると限られます。」
「賢治君が心当たりのある修理業者に聞いたところ、快く教えてくれたそうです。」
「貨物自動車の所有者はカルマ・トランジット。
密輸業あがりの運び屋ですね。」
真剣な顔で言う石燕。
「其奴らに聞けば輸送先が判る、か。」
「はい。
マフィア以外で誘拐の全容を知るのは此奴らしかいません。」
「潤君が調査中です。」
国木田の電話を指差す石燕。
『これから潜入します。』
電話先から谷崎の声が聞こえた。
「様子は?」
『湖の底みたいに静かです。』
「(静か…?それって…!)潤君!急いで突入してください!」
谷崎の言葉に、はっと気づいた石燕。もしかしたら、業者全員が殺されているかもしれない。
『!判りました!』
石燕の考えに気づいたのか急いで潜入した谷崎。
『…やられた…先手を打たれました!』
「おい、如何した⁈」
『口封じに_____
_____全員殺されてます!』
なんとなく嫌な予感がしていた。予感的中してしまった事を顔を曇らせる石燕。
「芥川だ……糞っ!」
国木田も苛立ちがある様子だった。
如何するかと、話し合っている中、福沢が立ち上がって乱歩の元に行った。
「乱歩。出番だ。」
乱歩の手元に写真を置く福沢。しかし、乱歩は気が乗らない様だった。
「乱歩、若し恙なく新人を連れ戻せたら_____」
「特別賞与?昇進?
結構ですよ。どうせ…」
福沢の言葉を遮り言う乱歩。しかし、次の一言で態度が一変する。
「褒めてやる。
そうだろう?石燕。」
「(あれ巻き込まれてる…)えぇ、勿論。」
福沢に言われ、ふふふ、と笑いながら言う石燕。
「そ____
そこまで云われちゃしょーがないなあー!」
先程まで妹分の彼女に笑いかけてもらえなかった所為か、ちゃんと見るんだよ!石燕!、と言い自信満々に眼鏡を着ける乱歩。
それは、反撃の狼煙となった。
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作者名:楓 | 作成日時:2021年2月28日 20時