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「あー、ごほん。盛り上がってるところ悪いけど、あたしも居るんだけど??」
「…………っ」
「どわ!!?」
不意に、態とらしい咳払いとともに呆れた声が聞こえてきて。
私は思わずキリトを突き飛ばす勢いで立ち上がった。
再び地面と激突する羽目になったキリトの方から、ごん、と鈍い音がしたが気にする余裕もない。
「…………あ、あの、リズ、別に、今のは」
「はいはい、まだ何も言ってないから、そんな必死に言い訳しなくていいわよ。蚊帳の外すぎてどうしようかとは思ったけど」
「…………ご、ごめん」
「いいのいいの。っていうか、Aもそんな顔できるのね」
「…………え。そんな顔、って────」
「必死な顔。いつも無表情だったから、ね。正直“人形みたい”って思ってちょっと怖かったけど……安心したわ。断然、そっちの方がいいよ」
大声だして怒ってるところも初めて見たし。
そういうリズベットの表情が、妙に優しくて気恥ずかしい。
慌てて脱げていたフードを被った。
真っ赤になった顔は、もう見られてしまっていたと思うけど。
…………案の定、狭まった視界の向こうから、クスクス笑う声がして居たたまれなくなる。
「いててて、頼むからもう少し労ってくれよな、A」
「…………………」
ぼやきながら、キリトが立ち上がる。
私は無言でそっぽを向いた。さっきは本当に取り乱してしまったが、ハイポーションも飲ませた今、心配なんてしてやるものかと意地になっていた。
キリトは苦笑して、上空に視線を向ける。
「さて。ドラゴンが追ってこないのは助かったけど、ここからどうやって抜け出したもんか……」
「え。テレポートすればいいじゃない」
リズベットがきょとんとする。
青く光る転移結晶をつまみ出して見せるが、キリトは首を横に振った。
「無駄だろうな。ここはもともとプレイヤーを落っことすためのトラップだろう。そんな手軽な方法で脱出できるとは思えないよ」
「そんな……」
絶句するリズベット。
それでも諦めきれないのか、実際に転移の音声コマンドを叫ぶが、やはり効果はないようだ。
彼女の手のなかの結晶は、ただ無言で煌めくだけ。いくら待っても転移は実行されない。
キリトは肩をすくめた。
「結晶が使える確信があったら、落ちてる最中に使ったけどな。どうも無効化空間っぽい気配がしたからな」
「…………だからこそ、キリトには落ちないで欲しかったのに」
「うっ」
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時