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「う……」

爆発めいた勢いで舞い上がった雪が、ふわふわと落ちて来て頬に触れる。
その冷たさで、遠のいた意識が戻ってきた。
最初に感じたのは、雪が触れたのとは反対の頬の下にある、温かさ。それから片手で握りしめた誰かの服の感触。

目を開けて、身体を起こすと、
私の下敷きになって力なく笑うキリトと目があった。

「……はは。生きてる、みたいだな」
「──────!!!」

その瞬間、ぶつりと何かがキレた。
視界の端に表示されたキリトのHPバーが赤い。一人だけ。彼だけだ。
なぜか、なんて、わかりきっている。



「……………っ、この、馬鹿!!!」
「!!?」

罵倒とともに何かが溢れた。
両目から。視界が滲む。
灼熱の熱さで、零れ落ちていく。

「………なんでキリトまで落ちるの、この馬鹿、阿呆、ドジ、間抜け!!!」
「ちょ、さ、さすがに酷くないか!?」
「…………しかも自分だけ下敷きになるって、死にたいの!?」
「い、いや、決してそんなつもりじゃ──」

何か言いかけたキリトの口を塞ぐように、喚きながらも取り出していたハイポーションの瓶を突っ込む。
キリトは目を白黒させながら飲み干していく。

「…………心臓が、止まるかと思った。私が助かったって、キリトが死んだら意味ない!」
「───!!!」
「…………本当に、死んじゃったかと思って、怖────」


「ごめん、A」


ひたすら喚く私の言葉を塞ぐように、ぐっと引き寄せられた。
キリトの腕のなか。閉じ込められて、その胸に押し当てる形になった耳に、確かな鼓動が聞こえて来て。


「本当に、ごめん。Aが落ちてるのみたら、頭が真っ白になって、気がついたら飛び出してたんだ」
「……………………っ、そんなの、」


いらない。
護らなくていい、私なんて。


きっと、これから先も。
私に限らず、誰かが目の前で危険に晒されたら、キリトは同じように、自分にできるすべてで護ろうとするだろうけど。

だからこそ、
せめてそこに“私ぐらいは入れないでいい”。

(…………キミが命を賭けるに値しない、キミを利用するだけの私なんて、気にかけなくていいんだ)

この世界にとって必要な、キリトの命を使って護る価値なんてない。


なのに、“嬉しい”、なんて。

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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時

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