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15-4 ページ43

「A……?」
「……………掴まって」

低く、囁く。
常よりは力強く。喪うわけにはいかなかったから。

あとは、キリトが───────




「A!!!!!!」
「………………え」



その時、名前を呼ばれた。
これまでに聞いたことのない、ひどく取り乱した声で。

直後、力強い腕で、リズベットごと抱きしめられる。

──────どくん、と鼓動が大きく鳴り響いた。


「二人とも、離すなよ!!!」
「キリト────」
「……………っ」



どうして、キミまで落ちたら。

そんな罵倒すら口に出せないまま、三人揃って、底の見えない穴のなかに落ちていく。

不意にキリトが右手を動かした。その手には剣が握られている。背後に引き絞り、次いで前方に撃ち出す───突き技だ。

「「「…………………っ!!!」」」

その反動で、私たちは弾かれたように穴の壁面目指して落下の角度を変えた。青い氷の絶壁がみるみる迫る。
リズベットが、恐怖からか息を呑むのが聞こえた。

しかし、激突の直前、
再び右手を振りかぶったキリトが剣を思い切り壁面に突き立てた。
武器をグラインダーにかけた時のような火花が盛大に飛び散る。がくん、という衝撃とともに落下の勢いが鈍るが、停まるには至らない。

(……………っ、これだけ落ちて、フィールドが途切れないなら)

落ちる先を見る。
案の定、雪が白くたまった穴の底が見えた。みるみる近づいてくる。激突まで数秒もないだろう。

せめて、私が下に。
そう思って離れようとした私を、誰かが行かせないとでも言うようにきつく抱きしめる。
いや、誰か、なんて考えるまでもない。

(………………どうして)

誰かが、護らなければ。
他の二人を。キリトと、リズベットを。
…………だから私が、と思うのに。離れられない。離れさせて、くれない。


そして、キリトが剣から手を離した。
両腕で私たちを固く抱き、身体を半回転させて自分が下になる。


悲鳴じみた私の絶叫は、
直後の衝撃と轟音で掻き消された─────

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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時

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