薬指に契約を【文豪ストレイドッグス】

人魚、陸に上がる ページ12

最近、中也が全く現れなくなった。

あの日から毎日探しているものの、一回も会えていない。

…どうしたのかしら。そんなに怒ったのかな…。

もしかして、鮫に食べられちゃったとか…？いやそんなわけ無い。この国の海は、凶暴な魚がいないのだから。


今日いなかったら、もう諦めようかな…

沈んだ気持ちで砂浜を歩いていると、遠くになにか倒れているのが見えた。一瞬ハッとしたが、人魚の姿じゃなくて、足があって…人間…!?

まさか水難事故!?

まだ生きてるかな、助けなければ。



『大丈夫ですか！お怪我はありませんか…！』



近くで見ると、服を何も着ていなかった。海に流されてしまったのかな。

うつ向けで倒れたまま、動かない。気絶してるのかしら？回り込んで顔に掛かっている髪を退ける。



『…は、』



この顔、どこかで……


小さなうめき声が聞こえた後、閉じられていた目が開いた。

青い瞳と、視線が交わる。



「……ぁ…、A？」

『………………まさか…、中也……なの……？』

「…A、やっと会えた…っ！」

『うわっ!?』



思い切り飛びつかれ、耐えきれず砂浜に背中から倒れてしまった。太陽が眩しくて、目を細めた。

上に中也が乗っていて、私をきつくきつく抱き締める。…色々、頭が追いつかない。


『ご、ごめん中也、ちょっと重いかなぁ…』

「あぁ、悪ぃな…最近会えなかったからつい」

『えっと、中也、この前まで人魚じゃなかった…？』

「そうだな。でも人間になったんだ」

『はッ⁉』

「これでAと一緒だぜ」

『ちょ…っ』



確かに、足も2本あり、人間の姿になっている。中也の言葉も、分かる。そして、彼も私の言葉を理解している。

凄い…！と、感動したいところなのだが…


『私も会えて嬉しいんだけど、裸で抱きつかれると…』


中也は凄い嬉しそうに私に擦り寄ってくる。
だけど、何も着てない。…ちゃんと、男性の体つきだ。べ、別にわざと見たんじゃないから！たまたま視界に…‼

…ゴホン。

きまずそうに目を逸らす私を見て、中也は不安になったのか、途端に表情が曇る。



「……もしかして、俺のこと、嫌いなのか…」

『違う違う！そんなことないよ？でもそのままの姿だといけないから、少し待っててね？すぐ戻ってくる…！』

「俺も行く」



立とうとする中也。

しかし、その足はおぼつかない。

幸せ　中也side→←嫉妬　中也side

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