raison d'etre (ページ2)

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02. ページ2

パッケージも値段も、とうに覚えたソレを探す。

近所にあるものの、あまり入ったことのないドラッグストアは、聞いたことのない音楽が流れていた。

天井からぶら下がっている案内を眺めながら、その通路に入ると。
棚の前で、うずくまっている人がいた。

「どうか……されました？」

ゆっくりこちらを向くと、

n『どれを買えばいいのか。解んなくて』

永瀬君と、同じ歳くらいだろうか。

長い前髪が、目にかかって。
それを指ではらうと、曖昧に笑ってみせた。

「どこか、痛いんですか？」

n『頭。最近ずっと。』

「そうなんですね。
他に今、飲んでる薬はありますか？」

n『ない。』

「薬はよく使いますか？」

n『ほとんど飲まない。』

「だと……コレがいいと思います。
あ、もし。胃が痛むようなら。
コレも一緒、」

すくっと立ち上がると、選んだ薬の箱をつかんで、

n『おねえさん。お医者さん？』

やっぱり、曖昧に笑ってみせた。

「いえ。あたしもよく使うので」

n『そう。コレ、ありがと。』

箱を揺らすと、通路を出て行った。

狭い通路で、すれ違った彼は。

雨の匂いと、煙草の匂いに混じって。

独特な、甘い匂いがした。

・

・

・

ベッドに置いたままの携帯が、点滅をして。

彼からの、メッセージを知らせる。

￣￣￣￣￣

おやすみなさい。

￣￣￣￣￣

たった、1言。

直接言えるソレを、言わないで。

いつも、後で。メッセージとして届く。

でもそれが、なんか彼らしいな。と思えて。
いつも笑ってしまう。

それで、安心して。
眠りにつける。

そういえば。

さっきの彼は、眠りにつけただろうか。

何の匂いだったかを、思い出そうとしたけど。

永瀬君の匂いが、微かに残ったシーツの上で。

それは、とても難しかった