兎少年と一週間(参)

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当たり前のように、極々自然にパフェを横取りされながらも完食し終えるとウェイトレスさんは空になった2つの器をさげて行った。

後半食べるのに集中してしまい、ぷつんと途切れてしまった会話を繋ぎ直そうと話の種を探す。
まだグラスの半分以上残っているドリンクをストローで飲む神威さんに可愛いですね、と言ったら機嫌を損ねてしまうだろうか。女の子のように可愛い容姿だからと言って、ほんと？嬉しい！なんて喜んだりしないのは分かりきっている。寧ろ怒りを買って夕飯のおかずを全部とられてしまいそう。

銀さんから、今夜はスーパーで特売のひとパック55円のミートボールがメインだと聞いているので、余計な事は言わないよう強く心に留めておく。


「今日はずっとその姿なんですか？」

「うん」

「なるほど…でも、そういう気分の日もありますよね」

余計な部分を抜きにして再スタートを切った会話はたった二文字で終わりを迎えた。そういう気分の日ってどういう気分の日だろう。間をあけない為に即座に返した自分の発言がよく分からない。

きっと神威さんも何いってんだこいつ、と思っている。
へへへ。 と、はにかんで込み上げてくる恥ずかしさを誤魔化してみた。

「そうやって聞きたいことを流す癖、昔と変わらないね。 まだ使わないの？ "訊く権利"」

神威さんの言う昔とは、私の家にいた頃の話だろう。
私からすればここ一年以内の話でも神威さんにしてみれば、二年以上前の話。そうだ、神威さんとはその辺の話もまだ出来ていなかった。

「……折角なので使っちゃいます」

まだまだお天道さまが元気な正午。日が落ちるまで時間はたっぷりある。私の話や神威さんの話、みんなのいる前ではなかなか作れない貴重な時間。

「どうしてその姿になっちゃったんですか？」

「アンタを連れてきた奴を油断させる為だよ。
元の姿じゃ警戒されて尻尾を出さないだろうから」

「魔法的な…」
「これは肉体の年齢だけを操作する術」

その質問を皮切りに、次々と溜め込んでいた話を投げかけていく。神威さんの口から出てきた私を"連れてきた人"のこと、そしてあの晩 阿伏兎さんに連れ去られた理由など。
これまで何となく理解していた状況を改めて教えてもらい、憶測が確信へと変わった。つまるところ、銀さんのせいではなく、春雨から逃げ出した天人が原因でその人を捕まえれば私は元の世界に帰れる。

それ以外にも、私が漫画の世界のキャラであることを知っていると告げられて驚かされた。銀さんから聞いたらしい。私のいない所で二人は情報共有をしているようだ。

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