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「お待たせ致しました。こちらご注文のチョコレートパフェといちごパフェになります」
「わ、美味しそう…!ありがとうございます」
「…ふふ。本日はご姉弟でお出かけですか?
ゆっくりお寛ぎしていってくださいね」
色合いの違う二色のパフェを私達二人の前に並べるとウェイトレスさんはカウンターの奥へ戻って行った。遠くから感じる微笑ましいものを見るような視線に気づかないフリをして長めのスプーンを手に取る。
…神威さんと私が姉弟。確かに今の神威さんは子供の姿をしているけれど、見た目は似ても似つかない。
(もし 普段の神威さんと一緒だったら、違う風に見られたのかな)
チョコレートソースのかかったソフトクリームをすくい取り、黙々と口に運ぶ神威さんの様子はウェイトレスさんの話をなかったかのように思わせてくる。
「さっきの、私 お姉さんっぽく見えたんでしょうか…!」
「くだらないこと言ってないで食べたら?
そこ、溶けてるよ」
スプーンの先で指された先にあったのは、細長いサンデーグラスに盛られた溶けかけのソフトクリーム。
それは今まさに白い液体へ形を変えてグラスの外側とテーブルを汚そうとしていた。
「えっ、え、溶けるの早くないですか……!」
「ちんたら話してるから」
「しれっと人のいちご取っていかないでください…!」
ソフトクリームに気を取られているうちに、いちごパフェの主役と言っても過言ではない大粒のいちごが神威さんの口の中へと拐われて行ってしまった。
何か一つ取り返そうと神威さんのパフェへ目を向けるとグラスの中に残されていたのは、底を彩るチョコ混じりの生クリームとコーンフレークのみ。私はまだ半分以上残っているのに…相変わらず食べる速度が他の人より早い。
先に食べ終えた神威さんは、スプーンを口に咥えて机に肘をつき、目を細めながらこちらを見ている。…暇そう、というよりつまらなさそう。
見られている気まずさから店内へ目を逸らすとカラン、と鈴が鳴った。新しいお客さんが来たようだ。入り口に長身の男性が一人佇んでいる。爽やかな風貌のその人はかぶき町には珍しいタイプの人。仕事の出張とかで来た方かな。
そんな考察をしていると足にコツンと何かが当たった。
「何うつつ抜かしてんの」
「なに言って……ん、ふふ…もう笑わせないでください…っ」
不貞腐れ気味に人の足を蹴ってくる神威さん。
今の姿では足の長さが足りないはず、とテーブルの下を覗き込むと何故か足だけ成人サイズに戻っていてそのアンバランスさが面白くて笑いが漏れてしまった。
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは!夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました!!(´TωT`)まじ最高でした!!ありがとうございました!!! (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…!こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました!(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです!毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜!! ありがとうございます!褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩! (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年9月18日 1時