兎少年と一週間(参)

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「はー、食った食った。ご馳走さんでした。
じゃ、俺はこれで」

膨れ上がったお腹を擦ると沖田くんは私の真横へ足を運んだ。今までろくな目にあわなかったことから避けるように神威さんの方へ体を寄せる。
いいんですか、こっちには宇宙一の暴君・神威さんがいるんですよ。
強気な訴えを瞳を通して語りかけ、沖田くんの動向を見守っていると隣から「いいように人を使うようになったね。俺の助けは必要ないんじゃないの？」と小言の雨が降ってきた。…、名前を呼ばれなかったこと根にもってる…。

そんなに怒らなくても、と思うも似た場面で同じ事をされたら私もきっといい気分にはならない。
沖田くんよりも神威さんの方が気にかかり、どう謝ってフォローを入れるべきか頭を悩ませる。いずれにしても相手の顔を見てごめんなさいはとても大事。顔の向きを変え、こちらを見ていた神威さんと顔を突き合わせる。

「あの、」

しかし、顔を合わせた瞬間 思い切りそらされてしまった。地味にショックで漬物石が落ちてきたような衝撃を受ける。

「おい、コスプレ女。お手」

「…て？」

「なんでィ、芸もできねェんで？」

微妙な空気も我関せず。沖田くんはズボンのポケットから取り出された鍵を手錠の穴に差し込み、錠を解いた。
途端に軽くなった腕。神威さんと繋がれていたものはそこで切られ、引き離すように体の位置を変えられた。
そこで漸くそらされた視線がこちらへ戻ってきた。

「なに堂々と人攫いかまそうとしてるアル。
その汚い手、さっさと離すネ」

「攫う？ 人聞きの悪ィ。これはあれ、あれでさァ。
レンタル彼女的なもんでィ」

「おまわりさんならレンタルしなくとも彼女作り放題じゃ…」

「じゃ、アンタが付き合ってくだせェ。
初デートは務所巡りでいいですかィ」

「え"、 いえ、それはちょっと」

「ちょっとで済むんだ。口説かれて満更でもなさそうだね」

ピンポイントで他意のない言葉を拾ってくる神威さんは拗ねモードに突入してしまっている。対して「器が小せェ」と小馬鹿にする沖田くん。二人が衝突して万事屋が崩落するのも時間の問題でその原因が私という現実味のない現実。全くもって嬉しくないモテ期(仮)に泣きたくなる。

軽はずみの口調から本気でないことは伺えるし、そろそろ沖田くんから万事屋を訪れた事情を聞いておきたい。

「A、その猛獣兄貴鎮めてきてくれ」

話術は得意じゃないけど頑張ろう。と、意気込むも行動に移す前に銀さんから別の指示が下った。
銀色の助け舟に乗り込んだ私は神威さんの手を取り、廊下へ連れ出した。

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