十九兎 ページ16
万事屋の暗い廊下を踏み鳴らし、洗面所の戸を開けた。洗面台に取り付けられた鏡に首元を晒すと痛々しい歯型がくっきり映る。
深く噛まれたそこはなにか巻いていないと目立ってしまうくらい腫れかけていて、これはいけないと
それから布団に潜り込むも寝付けず、意識が薄れてきたのは朝日が昇ってからのこと。ようやく眠れる…。
そんな事を温かい陽の光に当たりながら思っていた。
「うわ、
お昼まで熟睡コースを確信していた私は、首筋の痛みに目を覚した。誰かが強引に絆創膏を剥してきたせいで肌がヒリヒリする。
「お、起きやしたか」
「……さ、」
「さ?」
「坂田さーん! 神楽ちゃーん!不法侵入のおまわりさんです!!助けてください!!!」
枕元に置いてある目覚まし時計を見る。まだ誰一人起きていない時間だ。なのにどうして
「人の顔見て逃げるたァどういう了見でィ。
あ〜〜痛い、痛いよぉ〜。心が痛いよーー。おまわりさんの心はズタボロだ〜」
はい、逮捕。 と片手に手錠をかけられ、頬がひきつる。
不法侵入者の心を傷つけた罪で逮捕されるなんて聞いたことがない。
「神楽ちゃん起きて…!神楽ちゃんー!!」
涎を垂らして寝ている神楽ちゃんに悲痛な声を届けるとそれに応えるように襖が飛んできた。神楽ちゃんはまだ寝ている。…ということは、別の誰かが起きてきたことになる。
襖の下敷きにされた神楽ちゃんが隣の部屋からやってきた足に踏みつけられ「ふごッ!」と声を上げた。ああ、神楽ちゃんにこんな酷い事するのは一人しかいない。
「おまわりさんにしておくには惜しい人材だ。
転職をオススメするよ」
誰よりも先に起きて来てくれた神威さんは、鎖を指先に引っ掛けると薄く目を開き、まだ誰も捕らえていないもう片方の手錠を自分の手首へ繋いだ。
「人のモノに勝手に手を出されちゃ困るな。
こういうプレイはまだ仕込んでないんだから」
「神威さん、何しれっとかけてるんですか。
私達ふたり繋がってても意味ないです!」
「寝込み襲われたんだろ? 俺の傍にいたら安心安心」
「お願いします、どうか鍵を…!」
ご飯にお風呂にお手洗い。生活全般安心できる要素がない。解錠を求めて手錠で繋がれている手を沖田くんへ向けるとニヤリ、どす黒い笑みが返ってきた。
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは!夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました!!(´TωT`)まじ最高でした!!ありがとうございました!!! (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…!こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました!(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです!毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜!! ありがとうございます!褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩! (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年9月18日 1時