兎少年と一週間(参)

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(※R-15描写有り)


さっきみたいに、と言いながらも抱き締めようとしたら止めたのはそっちなのに。弱々しく抱きついても「それだけ？」と、笑顔を向けられる。
ありきたり、意外性がない等々 容赦なく上がりまくるハードル。寄せていた体を起き上がらせて困った顔で神威さんを見れば、唇に人差し指を当てられた。

「わからないみたいだから、ヒント」

後部に回された手が髪を梳く。これはもうヒントというより答えも同然。キスを要求されている。夢の中でも何度か交したキスは、必ず神威さんからしてきていて私からしたことはない。

子供の頃 海外映画でみたキスシーンを記憶の隅から手繰り寄せ、動きを真似る。そういえば、慣れてない人がすると歯をぶつけたりなんて話も聞いたことがある。

(触れるだけ、触れたらすぐ離す…)
ゆるり、ゆるり。距離を詰めていく。


「…ここじゃないの？」

音も立てず、静かに終わったキスに神威さんは自身の口元を指差した。直前になって唇(本命)を避けて首の横に口付けしたことを不満そうにしている。

「そこは好き同士がするところなので…」

「なら、しても問題ないね」

素早くキスを落とされるとくっついていた体を引き剥がれ、ソファーの上に横倒しにされた。視界には、笑顔の神威さんと修復途中の天井。上から注がれる視線に顔を背けると神威さんの舌が首筋を這う。

「噛んでいい？」

「えっ、噛…！？ 痛いのは嫌です…！」

「また骨 折られるよりマシだと思うけど」

「どうしてそう極端なんですか…！ っんん…、ふ」

唇が合わさるとぬめりけを帯びたモノが口内へ侵入しようとやってきた。顔を反らしたり服を掴んだりと抵抗する。普通のキスだってまだ早いのに。これが経験の差なのかと思うと悲しくなってきた。

「泣くほどイヤ？」

「嫌というより、神威さん手慣れてるので複雑です…」

「俺はアンタが男慣れしてなくてよかったよ」

機嫌良さそうに言いながら、目尻から流れる涙を拭うと神威さんは首筋に歯を立てた。噛むというより食い千切られたのではと思わずにはいられない痛み。
骨折の時よりマシだと言えども痛いものは痛いし、怪我をしないに越したことはなくて。

噛み傷から垂れ行く血を神威さんの赤い舌が舐めとり、ざらついた表面が傷口を刺激する。流石に耐え切れず頭を押せば「これでおしまい」と、終わりを告げるリップ音が鳴った。

「これ以上やると俺の神龍が暴れちゃうから、続きはまた今度」

「は、はい。…おやすみなさい……？」

やりたい放題やって神威さんは眠りについてしまった。

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