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「阿伏兎が何を言いたいのかさっぱりだけど、関係なら召使と主人。それ以外にないよ」
「それだけか? 召使一人を気に掛けすぎやしねーか」
「気に掛ける?ああ、給料のこと? 子供の小遣いみたいなものさ。女は色々入用なんだろ」
駄目だ、話が通じねえ。団長が嬢ちゃんの給料に色つけてた事すら初めて知った。…手っ取り早く自覚させる方法はないか?片方しかない腕をテーブルに乗せて頬杖をつく。
すると突然 俺の横に大量の本が現れた。
ピンクと白、赤といったこの艦に不釣り合いな色が組み合わさった本の数々に顔を上げると第七師団イチの強面男──団員Gがそこに立って居た。
「阿伏兎、鈍感野郎を自覚させるにはこれが一番だぜ」
「……おいおいマジか」
話は聞いたぜ、と本を持ってきた団員Gは親指を立てて自信満々に笑った。いや、これ少女漫画。……団長に読ませるつもりか。
命知らずのそいつは俺が止めるよりも先に団長に一冊の少女漫画を手渡した。
「…へぇ、暇潰しにはなりそうだ。
ありがと。借りとくよ」
「ブハッ……!」
「俺が読むのがそんなに可笑しい?
上司を敬えない部下には減給が一番かな〜」
「俺以上に団長に尽くしてる奴他にいやしませんよ。
だから減給は勘弁してくれ」
飯を食い終わった皿を重ね、漫画を片手に抱え席を立つ。こうなりゃ逃げるが勝ちだ。 団長に借りた本を団長室へ持って行っていくと伝える。…兎に角 こいつを読んで少しでもテメェの気持ちに気付いてくれればいいが。
「あ、そうだ。一つ頼み忘れてたことがあった」
「あ? なんだァ?これ以上こき使う気か?」
「さっき阿伏兎には冗談で言ったけどさ、アイツの逃亡に手を貸した奴がいると思うんだよね。 そいつも見つけ出しといて」
「…ああ、わかった」
最後の言葉には怒気が含まれていた。見つけ出してどうするのか予想はつく。
──嬢ちゃんの手掛かりを探してる最中 海老色の傘を差した男女が地球行きの船に乗ったとの目撃情報は既に手に入れてある。
特徴からして女は嬢ちゃんで間違いなく、そして厄介な事に手助けしたと思われる男は星海坊主。団長の親父だった。 今知れば、団長は艦を飛び出していく事だってあり得ない話じゃない。
尻拭いは御免だ。頼む団長、漫画読んで丸くなってくれ。
…今は微々たる願いを腕の中で揺れる本達に託す他ない。
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おいも(プロフ) - 紫姫さん» 最後までお読みくださりありがとうございます🐰💓 トリップにも理由があるのかも、と考えた末辿り着いた場所がちょっとしたホラーになってしまいました((🙊)) 不完全燃焼気味のラストでしたが少しでも楽しめていただけていたら幸いです🙇 (2021年9月21日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - まさかの結末でごっさ驚きました!!そして少し怖かったです(笑) (2021年9月19日 18時) (レス) id: eab8838b37 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - カビキラーさん» 最後までお読みくださりありがとうございます(*´ω`) 以前から少し変わったお話を書いてみたかったので驚いてもらえて嬉しいです(∩´∀`)∩ トリップは色んなENDになれる楽しさがあるのでこの後二人が結ばれる世界線もあるかもです…! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
カビキラー - 神威と結ばれるのかなと思ってたのでオチで驚きました!軽く怖っ!って思いました笑 (2020年2月13日 19時) (レス) id: edf3a1c316 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 氷華さん» わー!ありがとうございます…! 二人にはまた巡り会ってもらいたいので、もし続編を書く機会があればハッピーエンドにしてみたいです!(´ω`)! (2019年12月26日 19時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年10月16日 19時