幹部ＯＢ ページ2
「何でしょうかねえ、変わりましたよねえ、
かと言って色気はないまんまですしねえ、
これ、どう処理しますか、大野室長」
昼休みを終えたばかりの社史編纂室に
小瀧くんの緩いぼやき声が響く。
腕を組んで目を閉じている室長からは
何も聞こえない。あら？
「ちぇっ、寝てるな、これは」
上司に舌打ちするとは、何事だ。
でもまあ、小瀧くんなら許されるかな。
私は、ふふっと小さく笑いながら
彼へと視線を向けた。
「えっ？」
驚いたことに小瀧くんが固まっていた。
「何、どうしたの？」
常に動いて喋っている小瀧くんなのに、
どうしてだか、微動だにしない。
つい、首を傾げる。
「いやっ、あの、はあああ、参る」
やっと動き出したと思ったら、
机に突っ伏してしまった。
何やらぶつぶつ言っているけど聞こえない。
聞こえない程の声ということは、
私は、聞かなくていいんだろう。
じゃあ、まあ、いいかな。
午後は、幹部ＯＢのインタビューの内容と
私の原稿と齟齬がないか確認する予定だ。
イヤホンを着けてパソコン画面に向かう。
この方、バブル期の幹部ＯＢだけあって、
すごく派手なネクタイをしていたなあ。
それが似合っているところが流石だった。
−当時は、法規関係も緩かったからね、
今なら犯罪になってもおかしくなうような
すれすれの取り引きも確かにあったよ。
持ちつ持たれつ、利益追求に余念なくさ、
君たちならＷｉｎ−ＷＩｎとか言うんだろ。
まあ、商売なら当たり前のことだ−
−常識の中に好機なんてないものだろう。
他と違う美味さがなければ喰い付かないし
その時だけ、何とかなっても次はない。
太客を確保するため知恵を絞ったものだ−
すれすれの取り引きの具体例を質問すると
一瞬、背筋が凍るような笑みを浮かべて、
そして元の通りの表情に戻った。
「録音されているのに、無理を言う人だね」
高らかに笑ったのだった。
録音を終えた後で呟くように、
「銀行とは恐ろしい所だと思わないか？
良くも悪くも世の中の縮図だと言える。
核心に近づくほど混沌としているはずだ。
それに耐えられるのかな、どうだい？」
きっと社史編纂室に籍を置く私のことを
知られているのだろうと分かった。
その上で聞かれているんだ、覚悟と本音を。
「私は、まだ核心という物を知りません。
なので、お答えようもないです」
じろりと睨まれた目に寒気がした。
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おはな(プロフ) - myaさん» myaさん、コメントありがとうございました。彼の魅力を書きたくて、私の言葉で書きたくて、それが原動力となって進められるものですから。ちょっと停滞してしまってすみません。少しずつでも更新していきますね。どうぞ良い時にお越しください。 (2022年4月24日 0時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - にゃんちきさん» にゃんちきさん、こんなのろのろ更新の私に優しいお言葉、ありがとうございました。長いこと想ってきましたから簡単に切り替えたりできないですね、イベントもないですし。その分、お話で楽しめたらと思ってはいます。無理せず進めていきますね。 (2022年4月23日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - あやかさん» はてさて、あやかさんをあの頃にお連れできているでしょうか。全力でお連れできるようがんばりますね！ビジネススーツで風を切るようにオフィス街を歩く姿、想像しながら読んでくださいませ。コメント、とても嬉しかったです。 (2022年4月23日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mamoさん» mamoさん、優しいお言葉に甘えましてのゆっくり更新です。ドキドキワクワクザワザワしてもらえているでしょうか。本当、気の重い日や寂しくなっちゃう日もありますよね。でもお話を書くことで昇華できそうです。ありがとうございました。 (2022年4月23日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mya(プロフ) - おはなさん更新ありがとうございました。お待ちしていました。これからも"おはなワールド"に浸っていたいです。おはなさんの描く翔さんは色っぽくて魅力的で惚れてしまいます。無理のないよう、おはなさんのペースでの更新をお待ちしています。 (2022年3月29日 8時) (レス) @page36 id: 65c4d71e7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年9月12日 19時
