天丼の日 ページ18
「はーい、お昼ですよ、佐々岡さん、
さあ、手を止めて食堂に急ぎましょう。
月曜日の天丼を逃しちゃいけませんから」
１２時の５分前、小瀧くんが立ち上がる。
行内の立場が危うい私を気遣ってのことか、
毎日のようにお昼ご飯に誘ってくれる。
小瀧くんがいない時は、室長がその代わりに
少々面倒そうに声をかけてくれる。
何となく守られているような気配がするのは
自意識過剰なアラサー女子の勘違いなのか。
地下からエレベーターで１４階まで昇ると、
人が高い所が好きなのが分かる。
眼下に広がる景色に意味のない優越感を持ち
それだけで気分が良くなるのだから。
ワンフロアを３つに仕切った食堂は、
ソファ席があり、カウンター席があり、
半個室になっているスペースもある。
私と小瀧くんは、大体窓側のカウンター席で
地下からは拝めない景色を堪能しながら
それなりに早いペースで食べる。
「すごいっすよね、この穴子の大きさ！
アスパラにれんこん、椎茸、お芋さん、
立派な海老まであって６００円って、
信じられないっす！」
「小瀧くんは、天丼が好きだよね、
月曜日は必ず食べてるもんね」
かきこむように食べながら器用に頷く。
食欲が若い。見ていて気持ちいい。
私は、お魚定食に白和えの小鉢をつけて
塩分量を計算して、おみそ汁は止めた。
「何で美味しさより塩分を優先するんすか？
佐々岡さん、そんな歳でもないでしょうに」
若い彼は、不思議そうに隣の私を見る。
「あのね、言ってなかったかな、
私の実家って町の洋食店なの。
ポークジンジャ―とかオムライスとか、
そういう家庭的な感じのお料理のお店よ。
だからおうちでの食事と同じように、
お客さんの健康を気遣ったりするの、
なんて言うか、習慣？癖みたいものなの」
「へえ、なるほど、そうだったんですか」
ふむふむと頷いてるけど、小瀧くん。
私、この話するの初めてではないですよ。
君、全く私に興味ないわね、別にいいけど、
必要なら何回だって説明しますけど。
「じゃあ、今度、ご馳走してくださいよ、
俺、休みの日にお邪魔しますんで」
「ええ、大歓迎よ」
その返しも全く同じだったわよ。
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おはな(プロフ) - にゃんちきさん、同感です。月曜日のスーツ、木曜、土曜日のカジュアルモード、どちらもすごく素敵。足首の細さ、あごのライン、良く動く手の、その指の長さ。ひえええってなりながら堪能しております。続きも頑張ります。 (2021年9月12日 14時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ひよこさん» ひよこさん、楽しみにして頂けているとは、ありがとうございます。オフィス街のランチ、しかもオープンカフェで男女４人。妄想が弾けてしまいそうです。休日出勤的な砕けた感じが出せていたら嬉しいです。 (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mamoさん» 香りが嫌味にならない男性って案外少ないと思うんです。そこまで気遣えるなら、他の身だしなみも素敵かなあと。Ａ型気質な感じもしますしね。私は爽やかだけでなく甘いムスク系、スパイスの効いたオリエンタル系も好きです。要は、その人が好きってことですね。ふふ。 (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちき(プロフ) - 翔さんの近くで仕事…いや、翔さんと同じ会社で仕事をするって緊張しかないですよね。彼女とは本当に付き合ってるのか…それを含めての秘密？気になって仕方がない（笑）ここ最近の翔さんのビジュが素敵すぎて妄想を織り交ぜドキドキしてます。 (2021年9月12日 3時) (レス) id: 64ed16a329 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ(プロフ) - おはなさん、更新ありがとうございます！櫻井次長の登場でどんな感じで秘密の恋になるのか今後の展開が楽しみです(^^) (2021年9月8日 17時) (レス) id: af7fdc48ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年7月5日 21時
