真意は ページ13
もうロータリーに入ろうかという距離、
その直前のパーキングメーターに停まる。
ここで降ろされるのかしら、晴れてるから
別に歩いたって構わないけど。
うんって、深く頷いてから私を見た彼を
こちらからもじっと見つめる。何？
「ちゃんと話したいと思ったんだ、
もっとこう、ずっと前からの事をAと。
だから帰って来るのを待っていたい。
金沢を発つ新幹線に乗ったら連絡して。
対局を応援しながら待ってるから、頼む」
一気に言った翔くんは、ふうっと息を吐く。
「とにかく、この前は悪かったよ。
俺が怒る理由なんて何もないってことが
すっごく悔しかっただけなんだ、ごめん」
「悔しかったって、どうして？」
「それを今、説明するには時間が足りない。
中途半端でごめんだけど、改めさせて。
じゃ、何でわざわざ送りに来たんだって所は
触れないでくれると助かる。
ああ、いや、あえて言うなら会いたかった、
Aの顔が見たかったってだけだよ」
私の顔を、翔くんが、見たいと思ったと。
真意を探るべく、更にじっと彼の目を覗く。
「本当だって、嘘じゃないし、信じろよ」
「信じるって、何を？」
「俺をだよ」
それは、どうだろう。
返事をしなかった私を薄目で睨んだくせに
大きな手が右手首を熱く掴んだ。
「信じて欲しい、会いたかったんだって」
信じると言う言葉は、重い。
軽はずみに使うべきじゃないと思う。
そんな私の価値観はひとまず引っ込めて
一旦、このまま受け止めよう。
肯定も否定もせず、小さく頷くだけにした。
「帰りの連絡は約束できないわ。
思うような結果が残せなかったら
そんな気になれないだろうから。
納得のいく結果だったら連絡する。
そこは、譲れない」
「いいよ、分かった、充分だ。
俺は、心からAを応援して待ってる」
妙に物分かりのいい様子に驚かされて
ロータリーで車を降り、見送られる。
行っておいでの握手だって言って、
ぎゅうっと痛い位に手を握られたこと、
その後、手の甲にそっと口づけられたこと。
終始驚かされていた３０分間を一旦忘れ、
ううん、胸の奥の引き出しにしまってから
新幹線の改札を抜けた。
尚更、負ける訳にいかなくなったわね。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
