提案 ページ28
「え？翔くんも近くに住んでるの？」
「うん、そう。言わなかったっけ？
もう少し駅寄りの細い道の奥だよ。
Aのマンションは、通り沿いだから
治安も良くて女性向きだね。
一人娘のためにご両親も考えたんだろう」
まあ、そうなのよね、確かに。
あの部屋はおじいちゃんの持ち物で
お家賃は、身内割引で格安になっている。
そう言うと、
「なるほど、だから許されたんだね。
一人暮らしなんてAのお父さんが
黙って許すはずがないもんな、納得した」
翔くんに連れられて来たのは、
歩いて３分ほど、駅に近いお蕎麦屋さん。
間口は狭いけど奥行きがあって純和風、
囲炉裏まである、雰囲気の良さ。
御値段も少々お高めの本格的なお店だった。
何故か瓶のビールも頼んで乾杯をする。
「じゃ、今日もお疲れ様ってことで」
「うん、お疲れ様」
うん、随分走ったしねって笑っている。
「こんな近くに住んでたなんてさ、
やっぱり偶然じゃなく運命なんじゃない？
俺、段々そんな気になってきたよ、A。
だから、あんまり構えないでもらってね、
こうして時々会ってくれないかなってさ、
そう言いたかったんだよね」
訝しむ私の視線をかわしながら、
爽やかな笑顔でテンポよく話す。
付き合ってた頃に比べると、
言葉も柔らかくなった気がするのよね。
大人になった余裕からなのかしら。
冬でもやっぱりせいろじゃないとって言って
私たちは冷たいお蕎麦を食べている。
テンポの良さは、お蕎麦のせいもあるかも。
素敵なお店だけど、デートっぽくはない。
気取らず飾らず、この前の洋食と同じく
親しい間柄であるけど異性の緊張感はない、
空腹を満たす時間。
「この辺って美味い店が多いんだよ。
Aもどこかおススメあるんじゃない？
次は、Aが案内してよ」
翔くんのペースになっていると分かっても
それを心地良いと感じる私がいる。
どう返事をしようか迷う私に気付いても
彼は焦る様子も見せなくて。
ただ機嫌良さそうに食べては話して笑って、
すごく楽しそうにしている。
「俺の好き嫌い、知ってるだろ？
それとも忘れちゃった？」
「忘れてない」
極端に短い私の返事にも崩れない。
「じゃ、問題ないね、楽しみにしてる」
そう言って、また微笑む。
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おはな(プロフ) - mayuさん» mayuさん、楽しみと言って頂けることに安堵しました。そうですよね、素っ気なく離れて行った彼、また近づいてきた彼の真意を書かなくては。時間がかかってしまいそうですけど、またmayuさんに来て頂けるようがんばりますね。 (2021年2月2日 20時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さる子さん» さる子さん、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。テンポよく更新できていた頃の感覚がなくて、愚痴の様なコメントを残してしまいました。彼の真意に辿りつくまで、しっかり書いていきますね。ありがとうございました。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、少しペースは落ちているところ、コメントを頂きありがとうございます。彼の行動の一つ一つに意味があり狙いがあり、気持ちがあるのはもちろんです。それを何とかお話に乗せられるよう頑張りますね。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - おはなさんの書くお話、言葉も、繊細な心の動きも丁寧に書かれていて、面白いです。翔くんは一体どうしたいのか続きが楽しみです！ (2021年1月31日 9時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
さる子(プロフ) - ぜんぜん！がっかりなんて！楽しみにお待ちしておりました。おはなさんのペースで更新してけだされば。彼の真意を想像しながらまっていますので。更新に感謝です。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: eb4a575f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2020年12月25日 23時
