【銀魂】カ ミ サ マ

先手 ページ10

ー総悟サイドー


「そういうと思ったんでェ、先手打っときました」

「は？」


旦那の言葉に、嫌な予感が身体中に駆け巡る。
危険信号を発する脳だが、ーー旦那のいう"先手"が
トンズラする隙を与えなかった。





「ーーーお、お久しぶりでございますっ、」



緊張感に上ずった声、だが、力強く響くそれには、
確かに聞き覚えがあった。同時に込み上げてくる
ひやりとした悪寒。・・振り向いた先では、
あの日と同じように、目をぎらつかせた子兎が一匹
俺に向かって駆け出していた。




「あああのッ、沖田総悟さんというんですよね。
どどどうもご機嫌麗しゅう」



「・・旦那、命はもっと大切にするべきですぜ」

「んなピリピリすんなって。ちゃんと話してみりゃ
案外イイ女かもしれねーぞ。保証はしねェけど」

「明日から背後に気をつけてくだせェ」

「オイオイ、目がマジだぞ沖田クン」



当たり前だ。マジで言ってんだから。
背後からバズーカ放つ気満々である。





「ご機嫌麗しゅう！」

「うるせェ聞こえてる」




初対面で感じた面倒臭さはご健在。
ご機嫌麗しゅうってお前、どこ見て言ってんだよ
完全に俺の頭に焦点が合ってんじゃねーか。




「いやぁ、また会えて嬉しい限りです！
たまたま坂田さんのオトモダチということで、
これも一つの運命なのではないかと思うんです」

「・・・あんた、俺に何の用ですかィ」

「私の愛をぶつけにきました！」

「愛ってのァ押し付けるモンじゃねェぜ。
つーわけで今日は帰りやがれ」

「やだなあ、押し付けたりしませんよ。
ただ一方的に投げるだけです」

「余計タチが悪ィや」



俺が迷惑がってることも、嫌味を放ったことも
この女には全く通じる気配がない。となれば、
この状況を打破する策は____、と
俺は再び旦那を睨みつけた。

・・が、ことを荒だてた当人は知らぬ存ぜぬ。
呑気にあくびをかまし、いつのまにやら頼んだ
甘味を口に運んでいた。

今すぐここで叩っ斬ってやりたい。




「まずですね、太すぎず細すぎず、柔らかすぎず
固すぎず・・、全てのバランスが完璧なんですよ」



俺の腹わたの具合など気に求めていないらしい女は
ベラベラとマイペースに語りだす。


・・俺が、ここまで気圧されてしまうことなど
今までにあっただろうか。我ながら器用なほうで
あるから、のらりくらりと逃げおおせていたが、
ここにきて連勝が止まっちまうのか。

秘技万歳→←手強い男

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す