【銀魂】カ ミ サ マ

秘技万歳 ページ11

風に揺られるその髪は、あの日目を奪われたそれに間違いなかった。びびっと全身が稲妻に打たれたようだ。こうしてまた近くで見ることができるなんて




「あっ、そうだ自己紹介・・、
私、滝沢Aといいます！沖田さんの髪を想うと
興奮して眠れません！」

「とんでもねェ害悪だ。ちなみに橋渡しした旦那も
お縄でさァ」

「興奮して眠れないだけですよ！誰にも迷惑かけて
ないじゃないですかぁ！」

「俺に不快感を与えてる。こりゃ極刑モンでィ」



「そのまま寝不足で死ね」と吐き出した沖田さん。
それ即ちその麗しの髪を想いながら死ぬということ
であり、私にとっては本望というか何というか。




「・・・・わお！ありがとうございます！」

「本格的にトチ狂ってやがらァ」



好きなもののためならば、人間誰しもトチ狂った
獣と化すのである。人間に限らず、これは生き物の
心理だ。誰にも止められない止まらない。





「沖田くん、俺はそろそろ帰ェるわ。その女は、
頼んだぜ」

「旦那、聞こえませんでしたか？あんたも一緒に
ブタ箱行きでさァ」

「Aチャン、しっかり捕まえとけよ。
そいつ相当逃げ足速ェからな」

「テメェらいい加減に・・、」
「逃すともう二度と会えねーぞ」

「あいあいさ！」


すかさず沖田さんの腕を掴んだ。もう逃しはしない
マイスイートハニーヘアー。





「ーーーさ、続きしましょ」
「何の」

「逢引」


私の言葉にため息を吐き出した沖田さん。
彼が動くたびに揺れる髪が美しい。見とれている
私に、力ない声が降ってきた。



「・・いいか？俺ァお巡りさんってやつで、
テメェと違って多忙を極めてんだ」

「知ってます！しんせんぐみですよね」

「そうだ。テメェみてェな変態も含め、
市民の安全を守るために昼夜問わず働いてんでィ」

「ほぅ」


「つまり、テメェと遊んでる暇はねェ」




つーわけで、と振り払おうとした彼の腕は微動だに
しなかった。なぜかって？ーーー私だって日々進化
しているということだ。怪訝そうな顔をする沖田さんに私はニヤリと微笑んだ。


「ふふふ、この前は腕を振り払われた瞬間に
逃げられましたからねぇ・・徹夜で関節について
勉強したんですよぉ！！」



あの悔しさは忘れない。私にもっと力があれば。
この髪を愛でるためならば、努力を惜しまない。

非力な乙女でも簡単に成人男子の動きを制する秘技というのが、この世には存在するのだ。万歳。

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