【銀魂】可もなく不可もなく

スマートに ページ40

ー銀時サイドー



仕事終わりの一服。





(ーー馬子にも衣装ってやつか)



なんて、悪態じみた言い訳をかます。
俺の発言により、向こうで少しむくれているAの
頬は、いつもよりピンクに色づいており、
その小さな唇も艶やかだ。

この前まで、特にいじるところさえなかった
どちらかといえば無特徴であった顔が、それなりに
男の目を惹きそうなものに変身した。



いや、実は素もそれなりに良質だったのだろうか。
俺の周辺にはびこる顔だけ詐欺の腐れアマどもを
見慣れてしまい、こいつの小綺麗さに
気づかなかっただけだというのか。







「ーーー銀ちゃん、Aのこと見過ぎヨ」

「ッ、はあ！？」

「隠しても無駄アル。なんだかんだ言って見惚れてんじゃねェかヨ。恥ずかしい奴アルナ」


「ふざっけんじゃねーよ！誰があんなっ、」





なんでこんなマセガキに呆れ顔かまされにゃ
ならねーんだ。なんで俺があいつに見惚れなきゃ
なんねーんだ。勘違い甚だしい。





「そうやって青臭い反応ばっかりしてっから
銀ちゃんは何の進歩もないアル。そろそろスマートに自分の気持ち伝えられるカッケー大人になれヨ」

「ねえお前何歳」




オレンジジュース片手に得意顔で説教。
一体誰がこいつにこんな言葉を仕込んだのだ。

ガキの脅威に目を剥きながらも、
机を拭き始めたAをふとみやる。



・・なんだ、やはり落ち着かねェ。



見える横顔から溢れ出る庶民感と善人感は
間違いなくあの女のものであるのに。造形だって
いつもと変わらず、ただ唇と頬、目元に色が入った
だけだってのに。ーーどうも、雰囲気が違う。


ふせられた睫毛や筋の通った鼻、色白の肌は
こいつの自前で。つまりいつもと同じだ。


どこが違うのだろうか。







「えっと、銀さん？どうしました？」

「あ？・・いや、茶」


「まったくもう、存分にくつろいでますね」




いきなりこちらに向けられた視線が重なり、
咄嗟に口をついて出た言葉。

よかった。湯飲みを空にしといて。




そいつの手が、俺の手から湯飲みを取り上げる。
ーーー小さく触れたそれが、やけに暖かくて。







「似合ってる」


「え？」



気付いた時には。






「いいんじゃねーかっつったんだよ、化粧」


「あぁ、はいはい、ミリ単位ですよね」
「ーーいや、」






"似合ってる"




紡いだ言葉は、神楽が言うように、
スマートだっただろうか。

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