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「すき…?」
体はそこにあるのに中身が空っぽのような、
まるで自分の体が自分のじゃないような感覚。
口の中は少し乾いていて、
出てくる言葉もなんだか乾いた感じがする。
それとは逆に、目元はじんわりと潤んできた。
「ははっ、うそ、だぁ…」
「ホント。恋愛対象として好きです」
「だって、でも…」
すごく欲しかった言葉なのに。
すごく嬉しいはずなのに。
なぜか簡単に信じることができなくて、
否定的になっていると「Aさん。」と太一が名前を呼んだ。
「俺は恋愛に関してはホント未熟だし、
性格も素直じゃないところがあるみたいだから、
Aさんを困らせる事も多いかもしれない」
あるみたい、って…
言葉は真剣なものなのに、
所々、太一らしさがあって、ちょっぴり気が抜ける。
でも、そんなところにもキュンとして、
可愛くて、愛おしくてたまらないと思ってしまう。
「まぁ正直、Aさんが
他の人と恋愛してるのを見たくないってのもあるんだけど、」
そう言いながら私の両頬へと手を伸ばして、
むにっと軽く摘んでは優しく目を細める。
クラスマッチの時みたいに抵抗することもなく。
されるがままに太一を見つめる。
体中の熱が頬へと集まり、瞬きと同時に
大粒の涙がパタッと制服へとこぼれ落ちた。
「どうですか、俺と。
Aさんがいてくれたら部活も、勉強も、
これからの色んな事も、俺はたぶん頑張れると思う」
「…っ、」
優しく呟かれたその言葉を聞いた途端、
理性の糸が解けるように、
私は勢いよく太一の首元に腕を回して抱きついた。
ぎゅうっと強めに抱きつくと、
「わ、」と手を離した太一が驚いた声を出す。
「大好き…っ、太一」
涙でぐしゃぐしゃの顔、
可愛らしさのない声音、
力いっぱいの抱擁、
と女の子らしさもゼロに近い状態。
「私も、太一と、ずっと一緒にいたい…っ」
でも、そんな事は気にもせず、
私はずっと貯めていた太一への想いを伝えた。
私の気持ちと太一の気持ちが重なったことが嬉しくて、
幸せでいっぱい過ぎて涙が止まらなかった。
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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時