百六十八 ページ18
『あー…頭がー…』
菜々子さんに無駄に揺らされた所為で頭が痛む。
あの人私に言うだけ言って泣きながら走って部屋を出て行ってしまった。
…いや、なんだったんだ。嵐かよ。
『でも言うこともわかる、か…』
菜々子さんの言うことは私の心にすんなりと入ってきたのもまた事実の一つとしてあって。
十四郎ちゃんには…なんて理由を沢山つけて本当から逃げ回ってるだけなんだ。
ここにきたからもう行けないとか、嫁に行くから気持ちは諦めなきゃとか縛りをつけてただけなのかなと。
(ーー…好きな気持ち否定しなくてもいいのか)
ストン、と何かが落ちた音がした。
途端心の中がスッキリとした気もする。ぽろりと涙が頬を伝って着物へ染みを作った。
『…あはっ、こんなに、好きだったんだぁ』
「それ誰のこと言ってんだ」
『旦那！』
ひらりと怠そうに片手を上げた旦那。
あの日に残りのお金を渡して突き放したはずなのに何故かこの人はうちの敷居をまたいできた。
そしてその後ろから眼鏡と朱髪も現れる。
「A！」
「Aさん！」
『神楽ちゃん…新八くんまで…』
「何一人で全部終わろそうとしてるアル‼」
「そうですよ。請け負った仕事は最後までやりますから」
ニヤリと笑った二人に視界が歪んだ。
旦那を見ればそっちもそっちで口元を緩めながら私の頭を撫でた。
「ギャラはたんまり貰ったんだ。一つ余計な仕事さしてもらうぜ」
『余計な仕事？』
「おめーを大串くんのとこに絶対ェ帰してやる」
『…大串じゃなくて土方ですよ、旦那』
「細けェことは気にすんな」
『いいんですか、犯罪者になりますよ？』
「勘違いすんな、俺ァお前ェが犯罪者になんのを止めるだけだよ」
『わー、うれしいー』
「おめー俺のいい言葉流してんじゃねェ‼」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 206人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翡翠 | 作成日時：2018年10月26日 11時
