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真剣な表情をしている林藤さんを前に、釣られて麟児も真剣な表情になる。
二人はソファに座りながら机を挟んで対面する。
林藤さんが少し笑みを浮かべているのは変わらないものの、それでも目は麟児を射抜いてしまうほど鋭い。
「上層部が今水面下で争ってるのは知ってるだろ?」
「はい」
林藤さんがバラしたんだけどな。そう思ったものの、それは顔にも出すことはない。あくまで真剣な表情である。
「その理由なんだけどな…」
頭をポリポリかきながらさっきの表情から一転。ちょっと困った顔になった林藤さんはその先を言う事なく、何故か話題を変えた。
「麟児は、近界民をどう思う?」
麟児は目をパチリと瞬きした。一体何でこんな質問をしたのかは分からないが、真剣に答えないといけないのは理解した。
自分にとって近界民はどういう存在なのか。
そう考えてみると、麟児にとって近界民は画面の向こう側にいるような存在と思っている事に気がついて、麟児は愕然とする。
まるで、テレビの向こう側にいる毎日目にする有名人のような存在だ。麟児は近界民というモノに何も感じていない。
麟児がボーダーにいるのは、妹を守りたいという思いだけ。
自分はこんなにも非情な性格だったのかと思う。自分には資格なんて全く無かったのだ。
麟児が固まったままだったのを心配したのだろう。林藤さんは麟児の目の前で手を振っている。それにハッとした麟児は、何かを言わないといけないと思う。
「俺は…」
そこまで言って、思っているままを言ってはいけないと思った。
俺がここにいるのは千佳のためだ。しかしここで千佳のためと言ってしまえば、ボーダーに千佳の存在がバレてしまう。千佳はボーダーをあまり信用していないし、ボーダーにとって千佳は喉から手が出る程欲しい存在になってしまうだろう。言うのは林藤さんだけだとしても、一体どこで情報が漏れるか分からない。千佳の事を知っているのは今の所千佳自身と俺だけだろう。この先の事を考えると知られるわけにはいかない。
ならば、ここが肝心だ。適当な事を言ったとしても林藤さんにはバレる。肝心な所は省いて本当の事を言わないといけない。
麟児はキッと林藤さんを見た。麟児は結構焦っていたので、林藤さんがピクリと手を動かしたのは気付かなかった。
「俺は、近界民の事を憎んでいるわけではありません。嫌いというわけでもないんです。」
「…嫌いじゃない?」
「はい。」
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しゅり(プロフ) - 更新ありがとうございます!心待ちにしていました! (4月2日 23時) (レス) id: de8642ea8a (このIDを非表示/違反報告)
エマ(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました!続きが気になるので作者様のペースで更新頑張って下さい!応援しています! (2月6日 9時) (レス) id: f652d6533b (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - すごく面白くて続きが楽しみで楽しみで…応援してます!更新頑張ってください! (11月12日 2時) (レス) id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ユキ - すごく面白かったです(((o(*゚▽゚*)o))) ずっと待っているので更新頑張ってください!! 応援しています!(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2022年12月10日 22時) (レス) @page11 id: ef5ec06190 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 続きが楽しみです!更新、頑張ってください!応援しています (2022年11月12日 19時) (レス) @page11 id: b758d3b9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年6月13日 9時