検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:11,157 hit

6・潜む暗闇に ページ6





『馬車が突っ込んだぞ!』
男が叫ぶ。

『わっ、私の代わりに男の人が…っ』
身代わりになってもらった女の子が震える声で言った。

『馬車を退けろ!』

『医者を、医者を呼べェっ!』


英語で語られたソレは、あたしの耳には理解できるはずなのに、言葉としては何ら意味の無いものだった。

隣ではターニャが、自身を抱きしめて震えていた。


瞬き一つしない黄金色の眼から、ボロボロと涙が溢れていく。



『エヴァンス…!!!』


愛しい愛しい恋人の名を呼んで、彼女は地面に膝を着いた。





彼らはこの日、婚約したばかりだった。



「嘘でしょ…?」


赤い血だまりを見つめながら吐いた言葉は、誰にも届かずに消えていった。





それから、状況は一変した。

まず、ターニャは笑わなくなった。

ぼうっとどこか一点を見つめ、その瞳には虚ろな闇が広がっていた。

目の下の隈、やつれた四肢、色が抜けたブロンドの髪、カサついた唇…。

全て彼女とは関係なく、彼女を表すのであらば、正反対の言葉なのだとすら思っていたのに。



「もう、私、どうすればいいのか分からない…。わかんないよ……。」

悲しみに堕ちたターニャは、あたしなど眼中に無いかのように泣き続けた。

「ターニャ、大丈夫よ。大丈夫。エヴァンスだって、きっとそう思ってるわ!
いきなり幸せになれとは言わない。なろうよ、幸せに。ねぇ、ターニャ…。」

必死の呼びかけも、介さぬかのように、
「もう、嫌。どうして…。」
と、彼女はうわ言みたいに繰り返していた。

あれは、そう。

確か、寂れた教会で、剣の稽古をしている時だった。

キィ、と扉を開けて入ってきたターニャは、いつもより更に虚ろに眼をしていた。

「ハルカ…、ハルカ…、アタシノ為ニ、喰ワレテヨ…。」

ばきっ、という音がして、メキメキといいながらそれは形を変えていく。


「…は?」

それは、あまりにもターニャとかけ離れた、機械仕掛の兵器だった。

7・殺してしまった親友。→←5・あたしは。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
設定タグ:神田ユウ , D.Gray-man
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

菜雲(プロフ) - これからも、菜雲をよろしくお願いします。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - 厚かましくはありますが、菜雲の方で細々とですが、小説を書かせてもらっております。よろしければですが、そちらの方も見ていだだけると、光栄の限りです。応援してくれていた方、本当に申し訳ありませんでした。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - 続きを待ってくれていた方や、楽しみにしてくれていた方がいらっしゃる中、とても不甲斐なく思います。大変申し訳ありません。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - こんにちは、元・菜っぱ、現・菜雲です。《命を懸けて》は、パスを忘れたために続きが書けなくなってしまいました。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:菜っぱ | 作成日時:2017年10月28日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。