17・組糸 ページ17
黙々と編んでいると、おもむろにラビさんが口を開く。
「それ、ミサンガさ?」
と、私の手元を指さして言った。
「ミサンガ?これのことですか?」
ミサンガ、と称されたそれを持ち上げて聞くと、
「そうさぁ!」
とにこやかに返し、
「中国とかで昔から御守りとか祈祷に使われてきた神具なんさ」
と続けた。
「神具…。日本は、組紐っていう元祖のものがあって、それを昇華させたのがこの組糸なんです。こっちだとミサンガって言うんだ…。」
「へえ〜、日本は鎖国をしているからなぁ…。あんまり情報がないんさ。組糸…綺麗さぁ!」
編んでいる様子をまじまじと見つめ、にかっと笑うラビさん。
「…これは比較的簡単なんです。二本目の糸をこうして三本目をここに通すと複雑な模様になる。他にもいっぱい編み方があって…」
敬語が外れているのも気づかず、組糸の説明に没頭してしまった。
ラビさんも引かないでいてくれたから、尚のこと嬉しく、ふんふん、と言ってくれているのに甘えてぺらぺらと話していく。
「お待たせ致しました。」
と、ウェイターさんがそう言っても気づかず、
神田さんに
「おい」
と、頭を叩かれながら言われて初めて気づくぐらい集中していた。
「痛てっ、え?あっ、ごめんなさい!」
と、慌てて謝ると大して不快に思った風でもなく、彼女は微笑み、
「ふふ、大丈夫です。お待たせ致しました。フレンチトーストです。」
と、私の前にお皿を置く。
アイスと生クリームの乗った、甘いトースト。
メープルシロップの入った小さなミルクピッチャー。
バターがふんだんに使われているだろうトーストは、こんがりと綺麗に焼き目がついて、見るからにふんわりとしている。
「かっ、可愛い…!」
思わず日本語になってしまうが、関係ない。
「冷めないうちに食べんさい。」
と、ラビさんがまた笑って言う。
「え、でも、」
まだ二人の分が来てないし、と続けようとすると、
「いいから。なぁ、ユウちゃん?」
と遮り、神田さんも早く食えと言わんばかりに大きくこっくりと頷く。
「えっと、それじゃあ…。いただきます。」
小さく手を合わせ、ナイフとフォークに手を伸ばす。
そのフレンチトーストは、とびきり美味しくって、何やらニヤニヤしてしまうほどだった。
「んほほほほ…」
思わず出てしまった奇声にぶっ、と吹き出した二人に、恥ずかしいやら情けないやらなりつつ、
「べっ、別にいいじゃないですか」
と返したのは、今になればいい思い出である。
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菜雲(プロフ) - これからも、菜雲をよろしくお願いします。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - 厚かましくはありますが、菜雲の方で細々とですが、小説を書かせてもらっております。よろしければですが、そちらの方も見ていだだけると、光栄の限りです。応援してくれていた方、本当に申し訳ありませんでした。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - 続きを待ってくれていた方や、楽しみにしてくれていた方がいらっしゃる中、とても不甲斐なく思います。大変申し訳ありません。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
菜雲(プロフ) - こんにちは、元・菜っぱ、現・菜雲です。《命を懸けて》は、パスを忘れたために続きが書けなくなってしまいました。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 22316c2bb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜っぱ | 作成日時:2017年10月28日 16時