どうぞ死んできてください。【ハウルの動く城】

ひととき ページ48

暫くして、風がやむ、そろりと目を開けると眉をひそめた荒地の魔女の姿。

「…おかしいわねぇ、変わってないわ。」

よかった…と思い手の中のお守りを見ればヒビがはいっていた。ごめんマルクル。

興味を無くしたように目を伏せた荒地の魔女をじっと見て、ひと息つく。
色を変える、髪の毛と同じことな筈なのに荒地の魔女が放ったあれはそんな優しい魔法じゃない気がした。

「次に会う時はもうあなたの心臓は男の胃の中ね」

そう言い残し消えた魔女。暫く放心状態が続いて、はっとした時、あの赤い本が目に入った。

「…あ、そういえば…これ」

持ち上げて中身を見ると期待通り。
あぁ、結果だけ見ればいいのだが…色々ハウルに話さなきゃいけないことが増えてしまったような気がする。

ややこしくなる一方だ。最初、私は寝てただけなのに。異世界に行くなんて、こんなことになるなんて。

ため息をひとつ。それは今日のどのため息よりも重かった。

魔法使いになりたいがために人を殺め、私まで呼び寄せ、殺す。そうして得た力で彼はなにになりたいのだろうか。それが真っ当な力な筈がないのに。

「……もし、万が一死にそうになったら一発言ってやろう。」

死んでやらないけどね、と少し強気になり本を抱きしめた。

外を見ればまだ夕暮れ。とりあえずは目的は達成した。

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