川辺にて ページ3
メローネの言葉に急かされ早めの閉店をして、未だ晴れぬ空の下を歩く。先を行くメローネは彼女を気にせずその長い足でずんずんと進んで行ってしまう。｢なるほど女が寄り付かないわけだ｣と嫌味を背中にぶつけてみるも、返ってきた言葉は｢苦労はしないさ｣のみであった。
Aは言い返したい気持ちを抑えて憎たらしい金髪を追う。
｢ああ、ついた｣
それはAに向けて発せられたというには些か小さな声である。到着したから声に出しただけといったところか。
メローネが立ち止まってから数秒遅れてAは彼の隣に立った。心配する素振りなど数ミリも見せぬ男の後ろを速歩でついてきたものだから、呼吸はやや乱れている。
｢君って奴は本当に……｣
｢そんなこと言ってないで早く座れよ。曇の日の川ってのも……まあ、悪くはない｣
文句を言おうとしたAの声を遮り、メローネは川のすぐそばに腰掛けた。どこまでも自分勝手な男だが、飲み物を差し出しているところを見る限り｢おつかれ｣程度は思っているのだろう。
｢……で、なんでまたこんな所に｣
｢夢を見たんだ。川の｣
｢夢？何か怖いことでも起こったの？｣
｢そういうんじゃあないけど、こうやって川のそばに腰掛けて……｣
夢の内容を思い出そうと口許に手を遣り、ぼそりぼそりと言葉を出していく。やや寒い川辺の風に枝が騒めくと同時にメローネはAへ視線を向けた。Aは困惑したが、視線を逸らすのも失礼かと思い見つめ返す。
｢…………あんたがさあ。隣で、何か歌ってるんだ。何ていう歌だかは知らないが、夢の中でおれはその歌に聴き入ってたぜ｣
｢何それ。人前で歌わないよ、私｣
｢はは、なかなか上手かったぜ。大会にでも出てみろよ｣
｢それはどうも。次に聴く時はお金払ってね｣
人気のない川辺で他愛もない冗談を言い合って二人は笑う。それと同時に一等強い風が草木を揺らして駆けて行った。メローネはううんと唸って視線を再びAから逸らした。水面の揺らぎが先程より大きく見える。
｢あんたの家、行っていいか？ちょっと寒い｣
｢図々しい男！別に構わないけど飲み物はセルフサービスね｣
｢はいはい｣
Aはそう悪戯っぽく言って立ち上がった。メローネもそれに続いて立ち上がる。これ以上寒くなる前に、と二人の足取りは此処へ訪れる際より速かった。
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えんがわ太郎(プロフ) - 水琴さん» 閲覧いただきありがとうございます。メローネ推しなので私利私欲のために書いています。応援ありがとうございます！ (2018年6月26日 14時) (
レス) id: db7f6d120b (このIDを非表示/違反報告)
水琴(プロフ) - 5部キャラ大好きなのでこういう小説は楽しく読ませてもらってます。メローネをチョイスしてのもいいです。個人的に応援してます! (2018年6月25日 23時) (レス) id: e55a26c290 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えんがわ太郎 | 作成日時：2018年6月24日 22時
