Damage

41 ページ42

side yuya





全く眠れず朝を迎えた。


昨日目の当たりにしたのに、未だ受け入れられない翠の死。



そんな状態の俺に、事務的に準備をしてくれた親。






喪服と香典、数珠。


分かってはいるけど、心が荒んでいく。

暴れてやりたい気分だけど、こんなボロボロで体が言う事を聞くはずもなく…ただ出来るのは、準備されたものを乱暴に取り上げるだけ。









.








.









由愛「雄也君！」



会場に着くと、制服姿の由愛が俺を見付けて走ってきた。


泣き腫らした目で無理矢理笑顔を作り、俺の体の心配なんかしてくれる。




翠から話はよく聞いてた、由愛。

まともに話したのって、今日が初めてかも。


一度伊野尾君と一緒に遊んだときだって、あいさつ程度だったんだ。




小柄で可愛い、優等生タイプ…


伊野尾君の、彼女。






由愛「雄也君、足は大丈夫なの？普通に座れるの？」


「あ、ああ。」




そんな事を言いながら、片手でやりにくそうにしてる俺を気遣い、何かと手を出してくる。

署名するのに付きっきり…香典出すのも見守られる。



キョロキョロと会場を見渡してると、俺が何を探してるのかすぐに察知。





由愛「慧は、あそこ。」




指差された先。

伊野尾君の両親と並んで座ってた。




由愛「あんまり…話せる様子じゃないから。そっとしとこう。ね？」


「…ああ。」









.









分かってるよ、そんな事。


だけど傍に行きたい。

昨日最後に見た伊野尾君は、弱々しくて消えて無くなりそうだったんだ。




通夜式の間、視線はずっと伊野尾君の背中へ。





由愛「翠…翠…。」


時折聞こえる、由愛の小さな声に心が痛む。









.

42→←40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す