Damage

15 ページ16

side yuya




翠「ふふっ…由愛がね、雄也に会いたいって。」


「…何それ。」




相変わらず布団の中でダラダラしてる俺達。

夢と現実を行ったり来たりの俺の隣で、翠はずっとスマホをいじってた。


LINEの相手は親友、らしい。

あの、翠の兄貴の彼女だ。



薄ぼんやりと返事してたけど、急に目が冴えてきた。






翠「別にやる事ないし、いいでしょ？」


「いいよ…うん。」




いつかまた会いたいって思ってた、翠の兄貴。

俺の事、覚えてるかな…
覚えてるよな、きっと。



でもまた、俺に壁作るかも知れないな。







.







.







翠「由愛ー！お待たせ！」



急かされ支度して向かったのは、いつもの海浜公園。

毎日のように来てて見慣れた景色なんだけど…



慧「…。」



久し振りに見るあいつが、この景色に入り込んで新鮮に思えてくる。


砂浜に続く階段に腰かけ、由愛が立ち上がって翠に手を振ってんのに微動だにしない。



…すっげー不機嫌な顔してる。

嫌だったんだろうな、ここに来るの。









.









昨日だって学校で会ってたはずなのに、会えばすぐに引っ付きまわる翠と由愛。

すぐに靴を脱ぎ、砂浜へと走ってってしまった。


…となると、俺達は放置。


まあ、予想はしてたけど。





「俺の事、覚えてる？」


慧「覚えてるよ。」




声をかけたら、意外にも普通の対応。

良かった。
俺、そこまで嫌われてないかも。



…って、一瞬思ったんだけどな。






慧「翠にタバコ吸わさないで。」




翠と瓜二つの顔で、釘を刺された。




慧「お前のとこから帰ってきたら、服とか髪とか…いろんなとこからタバコの臭いがすんの。」




しまった。

これじゃ全然仲良くなれない。


しかも何でか俺よりも態度デカいし…。



ウソだろ？

文化祭じゃ大人しそうに見えたのに。





慧「それにさ。翠、最近ずっと早退してんの。お前に会いに来てんでしょ？そーゆーの…。」


「ちょ、ちょっと待って、お兄さんっ！」



あ、やべ。

なんて呼べばいいか分かんなくて、咄嗟に出ちゃった…”お兄さん”。



当然だよね…
めちゃくちゃ嫌そうな顔で俺を見てる。





「えと…。」


慧「伊野尾ってゆーの、俺。知ってるんでしょ？」


「あ、うん…。」



それは分かってるって。




慧「そっちは？」



聞いてないの？俺の名前。


ああ、そうか…名前じゃなくって…。




「高木、だよ。」







.

16→←14

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す