Damage

11 ページ12

side yuya





翠「雄也ー！おーいっ！」



今日もまた翠がやって来た。

大きく手を振りながら走ってる。




放課後、何となく集まってる海浜公園。

学校が近い俺達はいつもここで夜まで遊んでる。


…って言っても、何かする訳でもなく
ただただ座って喋ったり、近くのカフェで飼われてる犬と遊んだり…そんな事して夜までダラダラ。


そこに、翠が混ざるようになった。






.






翠の定位置は俺の隣。

暗黙の了解ってやつ？


その事について、ここにいるヤツ誰も何も言わない。




翠「あ！またタバコ吸ってる！」


「…吸いますー…いいじゃん別に。」




お節介だな、全く。

適当に見つからないように吸ってんだから文句ないだろ。



うるさい翠に構わず、咥えた煙草に火をつけた。




「…！？ちょっと…！」



吸い込もうとした瞬間、横から翠が手を伸ばし、俺の口からタバコを奪った。

そのまま自分の口へ。




翠「…ふー…。」


鼻と口から細く白い煙。

潮風に乗って、消えていく。




「…バカ、何してんだよ。」


翠「あはっ…自分は吸うのに私が吸ったらダメなの？」







.






俺達の不穏な空気に気を使ってんのか、皆は砂浜に行ってしまった。

犬とボールで遊んで楽しそう…そんな姿を、俺と翠が横並びに座って眺める。





翠「雄也、もう一本ちょうだい。」


「…ムリ。」


翠「ケチ…。」




慣れてるなって思ったら、やっぱりそう。

前に吸ってたって。



あの兄貴と同じ学校に入るため、必死になって勉強始めた頃に止めたらしい。





翠「またタバコ始まっちゃった…。」


「ダメ、ホントに。バレそうになって大変だったんでしょ？」




吸ってないって言い張って、何とか処分は免れたらしいけど、それでも結構親に迷惑かけちゃったらしい。



…ああ、そっか…だからかな。


双子の兄貴の、あの目。

タバコ吸ってた俺と、関わりたくないって顔…。






翠「ここにいる時だけだよ。他では吸わない。雄也といる時だけ。」



そう言うと少し背を伸ばし、俺の方に顔を向けた。






翠「好きだよ、雄也。」



夕日に照らされたオレンジ色の翠。

俺の返事を待たず、そのまま顔が近付いてきて…キス。



どっちがどっちのか分かんない、タバコの臭いを感じながら、翠の背中に手を回した。









.

12→←10

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す