弐佰肆拾伍頁─両組織ノ困惑 10─ ページ19
「なんだ、太宰は居ねェのか」
「太宰さんなら国木田さんと外出中です。先程連絡があったのでもうすぐ戻ってくるかと」
「そうか。面倒だが待つしかねェな」
麦わら帽子を被った少年の返答に中也は壁にもたれかかって腕を組む。
彼等は知り合いなのだろうか。
その間に感じた関係性は初対面のようには思えなかった。
「えーっと、そちらの女の子が......?」
ゆったりとした長袖を着た茶髪の青年が私に目を向けて中也に問いかける。
少し弱々しく見えるけど芯があって優しい人そう。
「あぁそうだ。おい、隠れてねェで挨拶しろ」
まだ部屋には入らず顔だけを覗かせていた私に催促が来る。
とても朗らかで暖かい。
疑念や疑心はあるものの、敵意を感じる目は一つとして存在しなかった。
『有島Aです。どうぞ宜しくお願いします!』
だからこそ安心して笑みを浮かべる。
元気に穏やかに。
一挙一動に自然を交えて。
ニコニコしていると蝶の髪飾りをつけた黒髪の女性が近寄ってきた。
「おやおや、随分と可愛らしいじゃないか。昔はこんな感じだったのかい?」
「......まぁ、そんなとこだな」
『あれ?フルールは居ないんですか?これくらいの大きさのクマのぬいぐるみです』
「フルール君も太宰さんと一緒ですよ。多分監視役です」
私が手で大きさを表していると、白髪の青年が苦笑いを浮かべながら答えてくれた。
年齢は先程の茶髪の彼と大差なく見えるけどこちらは少し頼りなさが強い。
でも嘘をつくのが下手で素直な好印象。
太宰に遊ばれてないといいけど。
他の社員さんは事務員らしき人が二人と、赤い着物を着た少女と茶色の帽子を被った男性。
あの人が中也の云っていた名探偵なのかな。
全てを見透かされそうで何となく近づき難く感じた。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時