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「だから、彼等AIはみすみす他人の個人情報を閲覧させる不手際をしでかしている訳だよ」

昔からよくあることさ、と当人は言った。
 しかし昔は、個人情報なんてものは命の次に高価で、利用価値のある代物だった。紙で管理されていたが故に、ある特定の場所まで足を運ばなければ、其の人物の詳細情報を獲得することが不可能だったからだ。だから、社会の裏側では、より一層個人情報は丁重に取引され、国によっては目も飛び出でるほどの高額で売買されていた。
 「『パスポート』というものがその一例だ」と、漆黒の恩人は言った。
 百五十年前程の昔、パスポートという手帳型の渡航証明書が発行されていた、と。今は全面体内にデジタル化され、渡航する際は、網膜から収納された情報を読み取って使う『パスデータ』というものになっているが、元来の形をとるのはその『パスポート』という代物に違いない。それがまだ社会で利用されていた頃、その手帳に記されていた個人写真や名前、性別を含める個人情報が裏社会に高額で流通していた。犯罪者だとか、マフィアだとかギャングだとかが、自身の国籍とかいった身元を偽装して世界を渡り歩く為に利用されていたそうだが、と。

「確か『ニッポン』と言う国だったかな。今は半分ロシア、半分はアメリカに占領されて国家として機能しなくなった、ただの少々デカい島と化しているが。大昔、その国のパスポートは特に信用度が高くてね、他国で剃られては高額で取引されたものだ。それが今や、総じてデジタル化され、情報が人々の身体に置き換えられてしまっている。個々人のものによって違うが、網膜や指紋、顔、或いは皮膚の薄皮一枚や髪の毛一本のDNAによってアンロックのクリアは非常に簡単だし、他人のネットワークにもいとも簡単に介入できる。どれもこれも人間の中途半端なAIの扱いによって引き起こされたものだ。金も資料も本も、全て紙で間に合っていたものを、完璧なシステムを築かんとする前に、人間がデジタルに変換してしまった…。まァ詰まりは、君が誤認している『当人に寄るアンロックシステム』なんてものは全くもって成り立っていないというわけだ。現在のこの程度のシステムでは、君の思う、誰にも個人情報を侵されない秩序は成立しない。僕が君のディテールを容易に調査できたことにも納得が行くという寸法さ…」








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設定タグ:SF小説 , ADAPTERシリーズ , バトル   
作品ジャンル:SF, オリジナル作品
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作者名:ワッさん | 作者ホームページ:http://img.u.nosv.org/user/0301enmakun  
作成日時:2021年4月10日 17時

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