第十五話 降谷side ページ15
とても不思議な女性だった。
「安室さんって、女の人に泣かれたことある? 」
「もちろんあるよ。ただ、初対面では初めてだよ」
コナンくんが何かを勘ぐったのか、子供らしからぬ呆れ顔でこちらを見ているが、事実だから仕方がない。
ハニトラのようなものをしていれば、罪のない女性を泣かせることだってある。
でも、初対面で女性に泣かれるとは、相当珍しいことだろう。
しかも、バーボンでも、降谷零でもなく、1番女ウケのよい安室透の状態でとは…
「Aさん、昨日公園前で会ったんだけど…記憶がほぼ何も無いんだって」
「…ふむ、住所は?」
「住所も覚えてないみたい。だから、今は工藤邸に沖矢さんと住んでるよ」
「まあ、それならとりあえずは安心か…」
昨日公園で会って、記憶喪失だったのに、既にバイト先を探し始める行動力と精神力。
普通の人では不可能に等しいだろう。
「安室さんは、どう思う?」
「昨日本当に記憶喪失の状態でコナンくんと会ったならば、普通の人とは考えられない」
「それは僕も思ったよ。ただ、雰囲気は完全な白なんだよね。不審な点もあるからまだ何も言えないや」
「とりあえず、戸籍を探してみるよ」
「ありがとう」
彼女の不審な点は、普通の人みたいであるということだ。
ただ、昨日から記憶喪失な人が普通でいられるのは普通ではない。
さらに、俺に似た知り合いがいて、その人を思い出して泣いた。
この話が本当ならば良いが、嘘ならば何かしらの形で俺のことを知っていたことになる。
どの俺を知っていたかは分からないが…
バーボンもしくは、降谷零を知られていた場合、対応を考えなければならない。
嘘なのか、嘘でないのかの見分けはつかなかった。
正直、自然な受け答えであった。
もしあれが演技だったらと考えると、黒の率が急に高くなる。
あと、途中、コナンくんを見る表情に違和感を持った。
安心や信頼を感じているかのような表情。
昨日知り合ったただの小学生であるはずなのに…
まるで、コナンくんのことを自分と対等に見ている様に感じた。
つまり、コナンくんという存在も、前から知っていたのではないか?という仮説が考えられた。
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作者名:海扇 | 作成日時:2019年7月18日 17時