・二十五 ページ26
それでも事は嬉しい方向には進まなかった
元々財閥の当主であった薮様は
一度経営を立て直すと制約結婚をさせられていて
いつも妻の目を盗みここへ来ていたらしい
菫さんが想う人には正妻がいた
・
ある日女将が血相を変えて菫さんの部屋に来た
バンっと襖を開ける女将は見たこと無いくらい怖かった
菫 「なんでござんす?
そんな急いで」
女将 「どうもこうもないんだよ
あんたのおかげでここが潰されそうなんだよ」
菫 「は、?」
女将 「あんたの客の薮様がいらっしゃるじゃろう
薮様の奥様がここ潰すと押しかけてきたんだよ!」
菫 「つ、ま?」
女将 「知らなかったのかい?
薮様はご当主で」
菫 「それは承知でありんす
ですが妻がいらっしゃることは、、、」
女将 「菫も知らなかったのかい?」
菫 「はい、、、」
その時の菫さんの顔は
騙された絶望とか
遊郭に対しての罪悪感とか
そんなものよりも
寂しそうな顔をしてた
今にも泣きそうな目で
ただボーッとどこか一点を見つめていた
女将 「お前も知らなかったといえ
遊郭が潰されれば元も子もない
きっとお前に処分が下るのも時間の問題でいんす」
菫 「処分、、、」
女将 「今晩は頭を冷やしんさい」
そう言ってピシャリと襖を閉めた女将
その音と同時に菫さんの目から涙が溢れ出て
止まることを知らなかった
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作者名:いのみづちゃん | 作成日時:2017年8月29日 10時