姉愛［286］｡第二次へ｡ ページ36
弌宮颯輔side
｢いっちゃん…？｣
大好き。と言って目を閉じたいっちゃん。
微かに微笑んだまま硬直した綺麗な顔は、いつもと変わらないあの寝顔。一緒にお昼寝をした時のあの幸せそうな朗らかな表情だ。
眠っちゃ駄目だよいっちゃん。
まだ、まだ俺さ、まだ。
｢いっぢゃああぁ……っ｣
違うよバカ。寝てるんじゃない。
愛する人が、死んでしまった。
ずるいよ。ずるい。こんな。
最期にあんな言逃げするなんてあんまりだ。
｢あああぁぁっ…｣
俺だって、好きだったよ。
君に負けないくらい好きだった。
誰よりも大切で愛おしかった。
俺が告白したかった。
運命だと思ってた。ううん。実際に運命だった。俺は君を守るためだけの個性を持って生まれて、これまで君と片時も離れず生きてきた。
その一瞬一瞬が楽しくて。
俺の宝物で……。
｢あぁっああ"…!!｣
地面を殴る。殴る。
右拳が酷く削れて赤くなる。
でも、こんなのいっちゃんの痛みに比べたら。
────。
サイレンが聞こえる。警察と消防が今更駆けつけたみたいだ。ヒーローも何もかも手遅れだってのに。それもこれも、俺に力さえあれば。
俺が強ければ、俺の個性がこんなもんじゃなければ。
もっと強いものだったならいっちゃんを…。
ツツ──…。
鼓膜にノイズが響いた。
〈只今、第一次護衛対象天照一歌の死亡を確認しました。護衛は失敗。弌宮颯輔はその個性を担う者として未熟であると断定されます〉
無機質な無感情が、ごちゃごちゃうるさい。
〈第一次の生はここで終となります〉
｢……｣
〈これより弌宮颯輔を終了致します。第二次の生では二乃宮颯輔として個性に従い励みましょう〉
視界の右端にある自分の右手が白く光り始めた。
〈また、第二次護衛対象は男性です。成瀬二弦に降りかかる死の危険を貴方が壊すのです〉
｢……｣
〈身体の生成を完了。二乃宮颯輔を新たにログインします〉
勝手にしてくれ。何も言う気になれない。
守るとか…次とか、何だよそれ。
俺はもう──
〈全ての作業工程を完了。構築を完了〉
俺は、いっちゃんじゃなきゃ。
〈お疲れ様でした〉
＿＿＿＿
次に目を覚ました時には見知らぬ公園にいた。
ここは何処だ。周囲を見渡すと、キノコのような黒い頭が砂場で丸まっていた。肩が弱々しく揺れている。
｢ねぇ。そこの泣いてる子｣
｢ッ！？ だ、だれ｣
｢名前なんていうの？｣
｢ぇ…｣
気弱に俺を見上げる。
｢成瀬、二弦…です｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1743人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
