姉愛［287］｡第三次へ｡ ページ37
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二乃宮颯輔が成瀬二弦に抱いたものは多くが同情だった。口下手で底知れないネガティヴ魂を持って生まれた二弦は当然のごとく友人がいなかった。
二弦の中で人間が《苦手》から《嫌い》に変わったのは中学校に入ってからだった。
｢成瀬ーおーい成瀬ー｣
｢…な、なに……？｣
｢俺今からグラウンドでサッカーやりたいんだよ。だからさ、代わりにこのノート教材室まで運んでくんない？｣
｢…っう、ぅん｣
長い前髪で大き瞳を隠す二弦は誰から見ても地味な男の子。ポッキリ折れてしまいそうな細い手脚と軟弱で芯のない彼の態度は、同級生から先生までもを煽ってしまう。
もちろん相手側の心の狭さもあった。
受け入れることを拒まれて拒まれて、二弦の手をとってあげる人間はただ一人しかいなかった。
｢にっちゃん、こんにちは｣
二乃宮颯輔だけが二弦の支えだった。
颯輔の中でも、二弦は心の拠り所となっていた。
にっちゃんだなんて未練がましい渾名を口にしているが、徐々に暗闇も浄化されつつあった。
｢そ、颯輔さん…こんにちは｣
｢今日も来てくれてありがとうね。宿題一緒にやる？｣
｢ぅ、うん……これ…｣
颯輔の自宅で勉強会を開くのが日常だった。
けれどその宿題というのは、二弦の宿題ではなく。
クラスメイトに押し付けられた、二弦への嫌悪と嫌味が詰まったノートの形をしたそれだった。
｢こ、ここ…分かんないの｣
｢ここ？ んー。ここはねぇ｣
二弦は決して誰にも助けを求めなかった。
抱え込む子だった。
全部を一人で消化しようと、体の中に沢山の苦悩を溜め込んで膨れ上がって。
｢にっちゃん？ どうしたの？｣
｢…！ ぁ、な、なんでもない……よ｣
──それが爆発したのは、颯輔が16歳の春。
二弦が崖から身を投げ自らの命を絶った。
その崖は綺麗なサンゴ礁と眼下いっぱいの海を一望出来る、颯輔と二弦の、二人の思い出の場所だった。そこで花火をした。塩むすびを頬張った。
｢につぅ…ごめんなさッ…｣
｢二弦っ……クソ｣
颯輔は泣き崩れる二弦の両親を呆然と見つめた。
頭にくるほど来訪者の少ない二弦の葬儀を抜け出し、夜道をひた走った。
｢っあぁぁぁぁぁ!!｣
涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら叫んだ。
何故だ。何故、何故。
また守れなかった。
また殺してしまった。
俺は無力だ。
何も、出来やしない。
〈第二次護衛対象成瀬二弦の死亡を確認。非常に残念です。早速、第三次を開始いたします〉
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
