鏡花水月２ (ページ18)

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「……A、危ない」

グッと肩を引き寄せられる

殆ど同時に真横を車が通って行った

もう何百回も通った顕嵐の家への道は狭いけど車通りが多くて危なく轢かれるところだった

「あ、ごめん」

「いや、車道側歩かせた俺も悪いよ。手繋いでたから歩道側に寄せるタイミング失ってた」

ふとしたところが優しいな

こういう人が彼氏だと幸せなんだろうな

家に到着して靴を脱いでる時に思ってることを何となく口にした

「顕嵐の彼女になる人は幸せだね」

綺麗な猫目が少し潤んでいる

さっきまで繋いでた顕嵐の手が頬に触れた

その手は少しだけ震えていて

「顕嵐……」

顕嵐の目に映る自分が震えているのか
顕嵐の瞳が揺れているのかよく分からない

「Aは…？幸せになりたくないの？」

それが顕嵐の彼女になる人は幸せだねというさっきの何気ない一言に対する言葉なら、

遠回しだけど察することが出来た

「……幸せになりたいよ、」

震えていた顕嵐の手は冷たかったけれど徐々に血が通うのがわかる、あったかい

「俺が幸せにするから、付き合って」

綺麗な顔が近づいてきて

一瞬触れるだけだけど、やっぱり顕嵐は心地良い

これでいいのかも、って思ってしまって

「うん、いいよ」

胸の奥に何か重しがあることを隠すように
そう答えてしまった

こんなにこんなに苦しんだのに

結局顕嵐の優しさに漬け込んでしまった自分が汚くて最低で最悪なことは分かっているのに

誰かに愛されたいと思ってしまった

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