鏡花水月２ (ページ14)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:16,742 hit

０６４ページ14

･

「もう今日は帰ろ」

そう言った顕嵐は私の荷物も持ってくれた

優しくて顔も良くて料理だって出来る

私と一緒にいるなんてもったいない程の人

「荷物やっぱ自分で持って」

「え、あ、持たせてごめんね」

やっぱり2つ持つのは大変だったのか
私の荷物は返品された

「両手塞がってたら手繋げない」

その言葉に驚いて顔を見上げると既に顕嵐に手を握られていた

「嫌だ？」

ほんとは恥ずかしいけれど、そんな事言ったら怒られちゃうから必死に首を横に振る

「良かった」

「顕嵐、ありがとう」

「俺別に諦めたわけじゃないから」

この空間には一方通行な気持ちがふたつある
どちらかが叶うならどちらかは叶わない

「坂下さん…！」

今は本当に会いたくない

そんな人の声が聞こえて、体がビクッと反応した

私より少しだけ早く顕嵐が振り返る

「シャーペン忘れてたよ」

と言った先生は私が準備室に忘れてきてしまったシャーペンを届けに来てくれたみたい

「どーも」

とだけ言って顕嵐が受け取りそれを私に渡す

「二人とも気をつけて帰るんだよーさようならー」

手を振りたかったけど片手にはバッグ
片手は繋いだままだから軽く会釈するしかなかった

勘違いかもしれないけど、先生最後にチラって繋いである手を見ていた気がする

「あいつのどこが好きか知らないけどさ」

校門を出たくらいで顕嵐は話し始めた

「うん」

「俺はこうやってAと手を繋げるし、してあげたいこともしてあげられるよ」

それはまるで先生に恋しても意味無い、とでも言われているような気分にさせる言葉だった

･