25.和典の幼少期ーside和典ー ページ26
その子の言葉に耳を疑った。
上「お前、自分の名前、覚えてないの?」
女の子は首を縦に振った。
女の子「覚えてるのはあいつから逃げてきたってことだけ。」
上「あいつって誰?」
女の子「私のママ。」
上「そっか。家の場所は?」
女の子「わかんない。何にも。」
その時、俺と女の子のお腹が同時になったんだ。
俺とその子は笑いあった。
上「おなかすいたね。母さん、まだかな?」
女の子「ほんとだね。」
母「ただいまー」
上「ナイスタイミング!」
俺らは母さんの声に顔を見合わせ、玄関へ走った。
上&女の子「お帰りなさい!おなかすいた!」
驚いた母さんは笑った。
母「もうすっかり元気ね。じゃあ張り切って作るから、和典、その子に家の中を案内してきて。」
上「行こう。」
俺はその子に家の中を案内した。
夕飯を食べてるときに、その子について、母さんにはなしたり、呼び名を決めたり、
久しぶりに、母さんの料理がおいしく感じた日だった。
半年くらいそのこと過ごしてからのこと。
その子の親が見つかって、女の子が引っ越すことになった。
俺、意味わかんなくて、すっげぇムカついて、気づいたら、大嫌いって言ってた。
本当は大好きなのに。好きで好きでしょうがなかったのに。怒りが勝っちゃったんだ。
そのまま時間が過ぎて、女の子が引っ越す日。
このままじゃだめだ。ちゃんと向き合って、気持ちを伝えなきゃって思った。
でも俺、そいつの家も名前も知らなくて、どうしようか考えた。
それで、ふとあの海が頭に浮かんだ。あそこだ。あそこに行けば、あいつに会える。
俺は走った。いてくれ、と思いながら。
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作者名:彩芽 | 作成日時:2016年12月16日 7時