初桜、折しも今日は良き日なり【ars】 (ページ10)

今日:8 hit、昨日:9 hit、合計:282,812 hit

9.それが昔話。ページ10

「疑問を持ったら負けなの」
「疑問？」

ちょっと元気が無くなった雅紀を宥めるように、ニノがその肩を抱きながら歩く。

「例えばだ。浦島太郎にしてもな？乙姫も玉手箱なんて渡さなけりゃ良いじゃん、性悪女だなぁって思うだろ？」
「んー...」
「でも、それが昔話。だから、翔ちゃんが鬼ヶ島に鬼退治に行くのもな？悪い鬼を退治して金銀財宝を手に入れる！それで良いのよ」
「そーなの...？」

そーなの！ってニッコリ可愛く微笑むニノに、雅紀もつられて笑ってる。

意外と良いコンビなのかも。

けど言われてみれば、俺の私利私欲の為に突撃される鬼ヶ島の皆様も迷惑な話だよなぁ。

何だっけ...角が生えてて、牙があって、虎柄のパンツ履いてんだよね？
お爺さんは怖いって言ってたけど...

「あっ！潤くん、帰って来た！」

雅紀が空を指差して叫んだ。

あのマントで空を飛んで、偵察しに行ってくれてた潤がストンと地面に降り立つ。

「おかえり、潤。どーだった？」
「鬼ヶ島もう見える所まで来てるよ！」
「そうなんだ！よし、もう一息だな！」

潤の足元にニノと雅紀がしゃがみ込んで、マントをマジマジと見ている。

「すげぇなぁ、コレ」
「綺麗だねぇ！しかも、飛べるんだよ！欲しいー！」
「絶対売ったらたけぇよ！」

マントの端を持ってパサパサ揺らしてるニノに、潤は「うん、高いんだよね」って笑った。

「だから、僕ら雉はすっごい人間から狙われるんだ」
「それで罠に掛かってたのかぁ」

ニノと一緒にマントの端を掴んでた雅紀が黙り込んでる。

隣にしゃがんで顔を覗き込んだら、またちょっと元気が無い。

「どした？雅紀」
「人間...強欲だね...」
「...えっ？」
「本当に悪いのって人間？もしかして鬼って、人間の悪い部分を象徴的に擬人化した物なの？」

て...哲学的！

「はいはい、そーだよ！馬鹿犬！」
「馬鹿って言うな！」

ニノに腕を引っ張られて立ち上がった雅紀の耳は、やっぱりペタンと寝てしまってる。

「だからな？鬼を退治すれば、ニンゲンの悪い心も退治できんだよ。すげぇだろ？」
「...すっげぇ！」

寝てた耳がピンッと立つ。

「よーし！鬼退治っ！」

あっとゆー間に元気を取り戻した雅紀は、また先頭を走る。

「フハハッ！単純！」
「イイコだねぇ、相葉くんって」

尻尾をゆらゆら揺らして歩くニノと

マントをふわふわさせながら歩く潤。

目指す鬼ヶ島は、もうすぐそこだ。