初桜、折しも今日は良き日なり【ars】 (ページ15)

今日:7 hit、昨日:9 hit、合計:282,811 hit

14.恋ってやつは。ページ15

カウンターの中で料理を作ってるその姿から視線を外す事が出来ない俺の目を雅紀が両手で塞いだ。

「うわっ！ちょっと！何すんだよ！」
「駄目だよ、翔ちゃん。目がヤバイって！」

耳元で雅紀のヒソヒソ声。

「犯罪スレスレだぞ、その目付きは...」
「翔さん、女の子に免疫無いから...」

ニノの呆れたような声の後に、潤の憐れみに満ちた声。

「もう！雅紀、離せって！」
「あんま女の子をジロジロ見ちゃ駄目だよ？」
「...分かってるから」

そっと離される両手。

何か目の周りがジンジンしてる。

「相葉さん、メカクシストだな」
「ニノも目隠しが必要な際には、ご用命を」

ジンジンする目の周りを擦りながら、チラっとカウンターの中を盗み見る。

...可愛い...

「翔ちゃん、もうストーカーレベルだから」
「えっ！？」
「もしかしてさぁ、ってかもしかしなくってもさぁ、一目惚れ？」

ニノが可笑しそうにクフッって吹き出す。

「えっ！？Aに一目惚れ！？」

水が入ったコップを人数分運んで来てくれた智くんが驚いたのか、ちょっと水を零した。

「あ、ちょっと待って。もしかして、Aちゃんっておーちゃんの彼女だったりするの？」
「そうだね、さっきも『さとちゃん』って呼んでたし、リーダーの事」

零れた水を拭きながら、雅紀と潤が興味津々に訊いてる。

...そうだよ。

さっき智くんの事『さとちゃん』って呼んでた...

えーっ！？

彼氏なの！？
智くん、Aちゃんの彼氏なの！？

「違う違う、おれ彼氏じゃないよぉ。Aは、おれの母ちゃんの弟の娘」

智くんの言葉に、皆一瞬黙る。

「...いや、いとこって言えや！ややこしい！」

ニノがそう言うまで、俺も分かんなかった。

「Aは今、彼氏いないはずだよ」
「翔ちゃん、良かったなぁ。まずは第一段階クリアじゃん」

第一段階クリア...ってか、俺...

こないだまでサクランボん中に居て、その後も女の人って言えばお婆さんしか知らなくって...

だから、これが初恋なんだよね...。

全然、恋ってどんなモンか分かんないんだけど

...この後、何段階あるの？

ただ

「お待たせしました！お口に合えば良いんだけど...」

たくさんの料理を作って、テーブルに並べてくれたAちゃん。

「はい、どうぞ」

俺の目を見て二ッコリ笑ってくれる。

恋は、恋ってのは、心臓が壊れそうなくらいに脈打つもんなんだって事だけは

ハッキリ分かった。