PRESTO！【ars M.A】 (ページ6)

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6.一年が終わる。ページ6

駅まで走ったからか、思ってた電車より一本早いやつに乗れた。

これなら、どうにか電車の中で年越し...にはならなさそう。

電車の中には俺と同じように疲れた顔してる人と、これから初詣にでも行くのかな？ってゆー浮かれた人達が半分半分くらいで

俺は浮かれた人達を見ながら「初詣かぁ...好きな子と行けたら最高だよね」なんてちょっとセンチメンタルに思う。

地元に着くと、いつもより少しだけ賑わってるように思うのは近所に神社があるからなんだろうな。

時計を見ると、まだ針は重なってない。

「お...ギリ来年にはなってない」

駐輪場からチャリを出して、漕がずに跨って脚で地面を蹴りながらコンビニの前まで行ってみる。

何かもう、コンビニ覗くの習慣ってか癖になっちゃってるなぁ。

店からの照明で明るく照らされた入り口の前

...から、ちょっと離れた店外の角っこ辺りの暗がりでAちゃんが箒を片手に掃除をしていた。

会えるって、思ってなかった。
いや、ちょっとは会えたら良いなーって思ってた。

けど、本当に会えると思わなかった。
実際、勤務時間や出勤日の都合で会えない日だって多いんだって毎日のように覗いてる内に分かったから。

なのに今年の終わりに会えるなんて、ちょーラッキー！

俺はチャリをそこに停めて、Aちゃんに近付いた。

Aちゃんは俯いて地面のゴミを掃き続けてる。

「Aちゃん、こんばんは」
「あ！雅紀くん！お疲れ様」

顔を上げたAちゃんは鼻がほんのり赤くなってて
その鼻を小さくスンッて啜って、ニコッと笑った。

「ハハッ、Aちゃん寒そうな顔！」
「寒そう、なんじゃなくって寒いの！もー、手なんか冷え切っちゃって感覚無いもん」
「ホント？どれどれ...」

俺は箒を持つAちゃんの手に触れようと手を伸ばして、慌ててその手を引っ込めた。

あっぶねー...全然、俺、手癖治ってない！
女の子は簡単に触っちゃダメ！

出した手が不自然にならないように、自分の両手をスリスリ擦りながら「俺もだよー」って笑って誤魔化す。

「雅紀くん、仕事納めして来たの？」
「うん、そう。...Aちゃんは？」
「んー...これから同時に仕事納めと仕事始め」

朝まで勤務だからねぇ、って眉を下げて笑うAちゃんは

白い息をほぅ...と出して空を見上げた。

「今年も終わるね。雅紀くん、良い年だった？」
「...うん、すげぇ良い年だった...」

君と出会えた、この年が終わる。