PRESTO！【ars M.A】 (ページ5)

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5.仕事納め。ページ5

「...年を越す...」

大晦日に誰が服なんか買いに来るの？

閉めたって良いじゃない。
問題無いじゃない。

毎年そう思ってるけど、毎年店は営業するし、毎年それなりに混む。

しかも、閉店後に初売りの準備までするから帰れない。

「...蕎麦...食いたい...」

俺は福袋を作りながら、呟いた。

「...紅白...観たい...」

チラッと腕時計を見ると、まだ年越しまでに一時間ちょっとはある。

とりあえず、メンズの福袋は大方作った。

「ねぇ、レディースの方の福袋どう？終わりそ？」

眠たそうな顔をしながら作業してる女の子スタッフ達に声を掛けると「もう終わりますー！」と良いお返事。

「そっか！うちのスタッフ達は優秀だね！てんちょーは鼻高々だよ！」

近くに居たスタッフの頭をポンポンと撫でて、俺は一瞬店を出た。

「さっ...む！！」

あーぁ...翔ちゃんは彼女と仲良く年越ししてんだろうなぁ...。

店の前にある自販機でコーヒーやら紅茶やら買い込む。
ガコンガコンと落ちて来た缶を両手に持って、持ちきれない物はあっちこっちのポケットに突っ込んでまた店に戻った。

「可愛いみんなに、てんちょーから差し入れだよー！」

買って来た飲み物をカウンターに並べると、スタッフの皆が嬉しそうに「ありがとうございます！」って笑ってくれる。

その笑顔で、店長、仕事頑張れちゃう。

さて、後は片付けしたら帰れるかな...
さっさとやっちゃお。

「店長、おしるこ混ざってますけど...」
「え？美味しいじゃん。みんな、おしるこ嫌い？」

美味しいのになぁ。

「甘くて疲れも取れるよ！」

俺はカウンターに残されてたおしるこを手にして、一気に飲んだ。

ちょっとした休憩を挟むと皆の元気も復活したらしく、そこからの片付けは気持ちが良い位手際良く進んだ。

時計は11時半を指す。

「みんな、お疲れ様！女の子は気を付けて帰ってね」
「店長は女の子に優しいですねー」

俺が女子スタッフに手を振ってると、男のスタッフが近寄って来た。

「男にも優しいでしょ？俺はみんなに優しいよ？」

ソイツの肩を抱いてニッコリ笑うと「でも店長、本当に優しくする相手は一人で良いんですよ？」なんて

今の俺にはズドーン！って響く事を、軽く言われた。

「...だね」
「店長？」
「よしっ！明日は貴重な休みなんだから、みんな良いお正月過ごしてね！」

俺はソイツの背中をパンッと叩いて

「お疲れー！良いお年を！」

駅まで、何と無く走ってみた。