PRESTO！【ars M.A】 (ページ32)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:647,886 hit

32.帰国。ページ32

時差ボケで疲れ切った身体で空港に降り立つ。

これからこの大きくて重いスーツケースを転がして電車に乗るなんて、考えただけで倒れそう。

「俺が払うし、一緒にタクシー乗って帰ろ」
「え？相葉さん、良いんですか？」
「良いよ良いよ、君も疲れたでしょ？」

俺の代わりに交渉を全部こなしてくれたスタッフの肩をポンッと叩く。

タクシーの中ではお互いすぐ寝ちゃって

先にスタッフの家に着いて「またねー」って手を振って、俺はまた自分ちまで寝てた。

「お客さん、すみません」
「ん...？あぁ...着きました？」
「あ、いえ、ここからどの道で行けば良いでしょうか...」

座席に沈めてた身体を少し起こして、窓の外を見るといつも俺が使う駅。

あ、そっか...駅からの道はまたそこで詳しく伝えますって言ってから寝たんだった...

「えっとー...そこのコンビニの前を通って...」

停まってた車がゆっくり動き出す。

「でー...暫くまっすぐ...」

コンビニを通り過ぎる時に、ボンヤリしたままそっちを見る。

「...あっ！？良いですっ！ここで良いです！」

ボンヤリしてた頭が一瞬でキリッと覚めた。

コンビニのドアから、グーにした両手を上に挙げてウーンと背伸びをしながら出て来たAちゃん。

道路の路肩にタクシーを停めて貰って、急いでスーツケースを下ろして道路を挟んだ向こう側のコンビニに目をやる。

Aちゃんはまだそこに居て、眠たそうにアクビをしながら自分の自転車の鍵を外してた。

「あっ！めるしーぼー...あ、違う、ありがとうございました！」

荷物を下ろす手伝いをしてくれたタクシーの運転手さんに頭を下げて、急いで道路を横断しようとしたんだけど...

もうっ！何でこんな時に限って車バンバン通るんだよ！

キョロキョロしながら車が途切れるのを待ってたら、Aちゃんは自転車に跨ってしまって

「あっ！ちょっ...Aちゃん！」

朝っぱらから大声出しちゃって、周りからちょっと迷惑そうな顔されて慌ててペコペコ頭を下げる。

そんな大声で呼ばれたAちゃんはビックリした顔して自転車に跨ったまんま俺を見てた。

やっと車が途切れてガラガラとスーツケースを引いてコンビニの前に辿り着いた俺に

「おはよう、雅紀くん！」

って、Aちゃんがニッコリ笑ってくれて

ホントさっきまでの眠気、どこ行ったんだろって位、俺の目は爛々としてそうだな。