PRESTO！【ars M.A】 (ページ31)

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31.空飛ぶ店長。ページ31

買い付けは、行ってしまえばやっぱ楽しくて

同行してる本社のスタッフにショップリストを渡されて眺めてるだけでも、ワクワクする。

「今回も相葉さんのセンスに任せると社長は言ってますから」
「マジでー？じゃあ、交渉はお願いね？俺、フランス語無理だから」
「英語も無理じゃないですか」
「アハハッ！言葉はハートだよ！でも交渉だけはボディランゲージじゃ無理だからねー」

あ、そうだ...

「ねぇ、空き時間ってある？」
「あ、ちょっと待って下さいね？えー...っと...」

分厚い手帳をペラペラと捲って「はい、明日の午後なら大丈夫ですよ」って、語学堪能なスタッフは微笑んだ。

じゃあ、ちゃんとお土産買えそう。

いつも海外出張に来たら、皆にお土産を買って帰るのが俺の中では恒例。

おーちゃんにはTシャツ。
どのTシャツも、よく着てくれてる。

潤くんには花が題材の洋書。
お店の棚に全部、並べてくれてる。

ニノにはマグネット。
真っ白のニノの部屋で冷蔵庫だけがいくつものマグネットでカラフルになってる。

翔ちゃんには人形。
実は選ぶの一番時間掛けてるし俺も楽しいんだけど、翔ちゃんは迷惑そうなんだよなぁ。
照れ隠しかな？

今回も、空いてるって言われた時間に一人で街に出てお土産を選んだ。

両手にお土産と、自分に買った靴が入った紙袋をぶら提げて歩いてると一軒のお店が目に入った。

「あ...れ？この店って...」

立ち止まって、店内を覗いてみる。

ショーケースの中に、宝石みたいに並べられてるチョコレート。

「ショコラティエ...」

もう一度、店の名前を見てみる。

「こんな名前...だったよねぇ...」

こないだAちゃんが雑誌を覗き込んで好きだって言ったチョコレートのお店。

トクンって、胸が高鳴った。

「こんにちはー！」

店の扉を開けて、思わず日本語で挨拶しちゃって

そんな無駄に元気な東洋人に、お店の人は優しくて

ボディーランゲージと雰囲気だけで会話をする俺に、丁寧に接客してくれた。

「ありがとー！あ...めるしーぼーくー！」

甘い匂いのお店から出て、俺の手に一つ増えた紙袋。

バレンタインに男からチョコあげるなんて、変かもしれないけど...

「お土産だよ、うん。お土産」

俺が帰るのバレンタインの朝だから、どーせバレンタインには渡せないもんな。

だけど何か、胸はずっとトクトクしてる。

ずっと欲しかった靴を手に入れたさっきより、このチョコ買えた今の方が嬉しい。