PRESTO！【ars M.A】 (ページ4)

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4.遠慮の無い目。ページ4

「で？」
「え？」
「いつ、ちゃんとすんのよ」
「いつ...って...」

ちゃんとしなきゃってのは、分かってる。分かってるよ。

だけど...

「俺、年末年始忙しいからさぁ...」
「まぁ、誰でもそーだろ。実際、オレ今クソ忙しいのに何で相葉さんとノンビリ酒呑んでんだろって思ってるし」

自分が店まで乗り込んで来て拉致ったくせによく言うよ。

「とにかく俺、年内はちょっと...年始も暫くは忙しいから...」

無理かなぁ...なんて...

「ふーん...あっそ」

フゥ...っと俺に向かって煙を吐き出して、シラっとした目でこっちを見る。

...何だよ、その目。

子犬みたいに幼いくせに、奥の方がキンって音がしそうな程に尖ってる目。

それが俺に呆れてる時の目だって事くらい、もう分かっちゃうんだよ。
何年の付き合いだと思ってんの。

あからさまなんだよ、少しくらい隠してくれたら良いのに。
他人には『人たらし』って言われる程に外面良いくせにさ。

「ま、相葉さんの勝手だけど？ただ、先延ばしにしてたってそれがマイナスに働くコトはあってもプラスになるコトはねぇだろうな」
「そんなの俺だって...分かってるよ...」

だけど、忙しいから...

忙しいから、俺...

ううん、違う。

言い訳だ。

どんな関係だったとしても、その繋がりを切ってくのは気が重い作業だ。

見て見ぬ振りして、先に進めないかなー？って
そんな風に、どっかで思っちゃってる。

自分が作った『楽園』を手離す覚悟はとっくに出来てるのに

その『楽園』を壊し始めるのは、思ってたより憂鬱。

俺は机に置いてる携帯をじっと見る。

その中に残る、俺がいい加減だった証拠のあれこれ。

「言い訳すんのはラクだよなぁ？」

口の端をクッと上げて目を細めたニノは、俺の心の中なんて全部お見通しって顔。

その通りだよ、ニノにこんな小手先の言い訳が通用するわけ、無い。

「...早めに、どうにかするよ。ちゃんとする」
「へぇ。ンフフ、良いんじゃない？」
「ちゃんとして、クリーンな雅紀くんになってAちゃんに告白する！」
「はいはい、頑張れ頑張れ」

ちょっと面倒臭そうに笑うと、ニノは残ってたビールを飲み干す。

「ここは相葉さんの奢りな？」
「はっ！？ニノが誘ったんでしょ！？」
「はぁ？オレが相談に乗ってやったんだろうが」

テーブルの端に置いてあった伝票を俺の方に寄せて、ニノはでっかい声で「お姉さーん！ビールおかわり！」とゴキゲンに笑った。