PRESTO！【ars M.A】 (ページ27)

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27.ガラスの向こうに。ページ27

ハァ...って溜息と共に、地元の駅に降りた。

いつものようにチャリに跨って地面を蹴りながらコンビニの手前まで行ってみる。

「...いた...」

トクン、って何だか可愛く鳴る俺の心臓。

ガラじゃないなーって思うけど、でもAちゃんを見ると俺は本当に自分が恋してるんだぁ...って実感しちゃうんだ。

レジの交替時間だったのかバイトの男の子と入れ替わったAちゃんが、雑誌コーナーの整理を始めた。

短く切り揃えた色のついてない爪。
指輪も無い細い指で、スコンスコンと本を並べて行く。

そう言えば、前にもこうやってガラス越しに本を整理してるAちゃんを見たな。

あの頃は、自分がこんなに真剣に恋をしちゃうなんて思っても無かった。

まさか携帯の中の『遊べる女の子』を消去するなんて思っても無かった。

「あ...」

ガラスの向こうのAちゃんがこっちを見た。

一瞬、キョトンとした顔がすぐにニコって笑顔に変わる。

きっと、きっとね、もっと可愛い女の子っていっぱい居ると思うんだ。

Aちゃんはどっちかって言うと、そんな目立つタイプの派手さは無いし華やかかって言われるとそうじゃ無いし...

だけど、もう俺にはこれ以上可愛い女の子なんているの？って思っちゃう位、可愛く見えて

きっとそれが『好き』って事なんだなって...思ったりさ、するんだ。

俺は、チャリを停めてコンビニの中に入った。

「こんばんは」
「いらっしゃいませ、雅紀くん」
「うん、いらっしゃいました」

本を整理してるAちゃんの隣に立って、適当に本棚から雑誌を引き抜いて読みもしないのにパラパラと捲ってみる。

「Aちゃん...えっと、最近どう？」
「どう...うーん、どうだろう。変わらないよ、いつも通り」

クスクス笑って「雅紀くんは？忙しい？」って、俺にも訊いてくれる。

「そんなに忙しくも無いかなぁ」
「そうなんだ。あれ？でも雅紀くんのお店ってメンズの服も売ってるよね？」
「うん。...何で？」
「てっきりバレンタイン前だから忙しいのかと思ってた」

バレンタイン...自分が捲ってた雑誌に目を落とすと、デカデカと『バレンタイン特集！』って文字と、美味しそうなチョコの写真。

「クリスマスよりはマシかなぁ...」
「そうなんだぁ。やっぱバレンタインって言えば、お菓子なのかな！」

そう言って、俺が持ってる雑誌を覗き込んで来たAちゃんの距離が近くて

マジでもう、俺、理性保ってる自分を褒めてあげたい。