PRESTO！【ars M.A】 (ページ15)

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15.シャンディガフ。ページ15

Aちゃんの前に置かれるグラスに入った琥珀色の飲み物。

「シャンディガフです、どうぞ」

俺の前に置かれるジョッキに入った琥珀色の飲み物。

「ほら、ビール」
「マスター、俺とAちゃんで態度が違う」
「当たり前だろ？女の子と野郎では扱いを変えないと」
「俺もお客さんだよ！」

そうだな、常連さんだな！って豪快に笑いながらマスターは厨房に戻って行った。

「雅紀くん、これってビールじゃないの？」

俺の前にあるビールとさほど変わらないグラスの中身を見ながら、Aちゃんが不思議そうに訊く。

「んー、まぁとりあえず乾杯しよっか」
「あ、そっか！」
「じゃあ...新年に乾杯！今年もよろしくね、Aちゃん」
「乾杯！よろしくね」

どんなに寒くってもやっぱビールは旨いなぁ！
目の前には大好きな女の子が居るし、最高のお正月。

その大好きな女の子は、グラスに恐る恐る口を付けた。

「...どう？」
「あ、甘い？あれ？でもビールだ...」
「飲める？」
「え？飲めるっていうか、美味しい！」

ビックリしたような表情で俺を見て「何？これ！」って嬉しそう。

「シャンディガフってゆー、カクテルなんだけどね？ビールをジンジャーエールで割ってんの」
「へぇ...そうなんだ」
「家でも作れるから、自分でどんどんジンジャーエールの量減らしてったら最終的にはビール飲めるようになるかもしれないでしょ？」
「本当だねー！ありがと、良い事知ったよ！」

満足そうな表情でグラスを傾けるAちゃんを見て、俺も大満足。

このカクテル、普通のビールより飲みやすいからガンガン量いっちゃうんだよね。

だから、前はよくこれ女の子に飲ませてたんだよなー...酔わせたくって。

『あたしを酔わせてどーするの？』なんて言われたら『こーするの』なんて言ってチューしたりしてたよな。
なぁ、馬鹿な俺。

だけど、今は純粋にAちゃんにお役立ち情報を教えてあげたいなって思っただけだった。

「Aちゃん、無理して飲んだら駄目だよ？それ、甘くて油断しちゃうからすぐに酔いが回んの」

グラスに口を付けたまま指でオッケーサインをするAちゃんを、酔わせてその勢いで...なんて全然思えない。

だってちゃんと気持ちを繋げたいもん。

「お水、用意しといてあげるね？」

マスターに水を頼みながら、自分の中にほんの少し残ってた純情が

何だかちょっと、恥ずかしい。